(ブルームバーグ):中国人民銀行(中央銀行)は、海外企業や機関による人民元建ての資金調達を一段と促す方針だ。低金利やオフショアでの需要拡大をてこに、元の国際化を後押しする。
人民銀は先月30日に公表した年次リポートで、自国通貨の国際化を進める主要なステップの一つに、人民元の資金調達通貨としての役割を高めることを挙げた。元建て融資や元建て債券のパンダ債、オフショア人民元債、貿易金融など多様な調達手段の利用を支援し、海外企業や機関が元をより入手しやすくする取り組みを進める。
この方針は、中国が世界の通貨システムにおける人民元の役割を高め、オフショア事業体への元の流動性供給を拡充する意欲を示している。中国が資本流出を厳しく規制しているにもかかわらず、人民元を世界の利用者に提供するための手段となる。
適度に緩和的としている金融政策やデフレ圧力によって、中国の債券利回りは米国債の利回りを大きく下回っており、低い借り入れコストも新たな魅力として浮上している。
クレディ・アグリコルCIBの治暁佳エコノミストは、「人民元の利用を多様化する中国の取り組みの一環だ」と指摘。「中国の利回りが低下する中で、元は資金調達通貨としての魅力を増す可能性がある。パンダ債や元建て債券市場の発展を促し、オフショア人民元の流動性プール拡大につなげるだろう」と話す。
人民元の国際化はここ数年で一定の進展を見せている。国際銀行間通信協会(SWIFT)のデータによると、9月の貿易金融市場における人民元の使用割合は7.3%で2位だった。
中国政府は地政学的リスクから経済を守り、金融の安全性を高める手段として、クロスボーダーの活動で人民元の利用拡大を推進してきた。ドルが国際取引で支配的な地位を保つ一方、中国は今年に入り、元の国際化戦略を一段と積極化させている。米国の不安定な政策運営で金融市場が混乱し、ドルを巡る懸念が高まっていることを機会と捉えている。
原題:PBOC Pushes Yuan Borrowing Abroad to Internationalize Currency(抜粋)
--取材協力:Qizi Sun.
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