2025年11月4日、ロンドン郊外・ウィンザー城でチャールズ国王から勲章を授与された長崎県出身のノーベル賞作家カズオ・イシグロさん。

式典の後、イシグロさんは単独インタビューの中で、チャールズ国王と「AIの脅威」についての会話をしたことなどを語ってくれました。この単独インタビューに至るまでの舞台裏をお伝えします。(前編・後編のうち後編)

「返信がない…」不安なまま迎えた当日

すべての始まりは、式典の数日前にイギリス王室から届いた一通のイベント案内メールでした。 「ウィンザー城で叙勲式典」。名簿を見ると、サッカー元イングランド代表のデイビッド・ベッカム氏、そして、日本とゆかりが深い、カズオ・イシグロさんの名前がありました。

通常、イギリス王室が主催するイベントは英国メディアの代表取材になることがほとんどで、後から配信される映像や写真をもとにニュースを伝えています。しかし、今回はイシグロさんが授与されるとあって、ダメ元で自分たちも取材ができないか問い合わせをしました。

返ってきたのは「2名限り参加可能。ただしイシグロさんが取材に応じるかは不明」という、なんとも言えない答え。

私たちは、急いで氏名や自宅住所の情報を送って正式な取材申請をしたものの、それきり広報担当者からの返信はありません。

「本当に入れるのか?」「取材はできるのか?」 明確な答えがないまま、私たちは取材当日を迎えました。