(ブルームバーグ):10日の日本市場では株式が上昇し、日経平均株価は600円超上げた。米政府機関の閉鎖解除への期待や、米半導体などテクノロジー関連株が底堅さを示したことで、投資家心理が改善した。リスク回避圧力の緩和から円は対ドルで下落し、債券も売られた。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、「米国では空の便が遅れたり食料支援が止まったりするなど市民生活に支障が出ており、政府閉鎖が解除されるようなら景気にプラス影響」と述べた。さらに先週末の米国株はチャート上で下値の底堅さを示す「下ひげ」を付け、株価の過熱感は解消されつつあるともみていた。
株式
東京株式相場は反発。アジア時間10日の米株先物高もプラス材料となり、日経平均株価は一時700円近くまで上げ幅を拡大した。通期営業利益予想を上方修正した島津製作所株や人員削減計画を発表したオリンパスなども相場を支えた。
電機や精密機器など輸出関連の一角、非鉄金属など素材株が堅調。電気・ガスや建設など内需一角も高い。半面、リスク選好の流れから医薬品や食品などのディフェンシブ株は軟調で、通期営業利益予想を下方修正したホンダは大幅反落した。
米議会上院は、連邦政府機関の閉鎖を終わらせるための法案を前進させる手続き上の表決を実施し、可決した。政府再開となれば米経済への悪影響が和らぐとの期待が株価上昇につながった。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、政府閉鎖が長期化することで米消費が押し下げられることを懸念する見方があったが、クリスマス商戦を前に終結できることは「ポジティブ」と話した。決算発表に関しては、短期的な割高感が意識される中で、1株当たり利益(EPS)の中期的な拡大基調を確認できる内容だと話した。
為替
外国為替市場の円相場は対ドルで下落。米政府機関の閉鎖解除への期待から一時154円台までドル買い・円売りが進んだ。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、リスクオン的な流れでドル・円はしっかりだが、154円からは上値が重くなってくると予想する。「片山さつき財務相の円安けん制発言のほか、物価高対策で来年1月までには日本銀行の利上げが実施されるとみられることから、ドル・円の上は攻めにくい」と述べた。
日銀の中川順子審議委員は10日、岡山市の講演で金融政策運営について、関税政策などの影響を巡る不確実性がなお高い状況を踏まえ、今後のデータや情報を引き続き丁寧に確認し、適切に判断すると語った。
午前に日銀が公表した10月29、30日開催の金融政策決定会合の「主な意見」では、金利の正常化をもう一歩進める上で条件が整いつつあるとの見解が示された。為替市場で目立った反応は見られなかった。
債券
債券相場は下落。米政府機関の閉鎖が解除に向かっているとの見方からリスク回避的な動きが和らぎ、売りが優勢となった。日銀主な意見で利上げ時期が近づいているとする意見が相次いだことに加え、警戒感が強い11日の30年利付国債入札も売り材料視された。日銀の中川審議委員の講演への反応は限定的だった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、植田和男日銀総裁の10月会合後の会見は利上げに慎重だったが、主な意見は前向きな主張が多く、債券相場に「一定の重しになっている」と語った。30年債入札についても「一時3.3%台だった利回りは3.1%近辺に低下しており、投資家が買い上がるイメージは持ちづらい」と言う。
高市早苗首相は7日の衆院予算委員会で、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の達成状況を毎年度の予算編成などで確認する従来の方法を取り下げると表明した。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは10日付のリポートで「財政拡張リスクが再び強く意識されていく可能性が高く、30年債入札は需要不足となることにも警戒しておきたい」と指摘した。
新発国債利回り(午後3時時点)
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--取材協力:長谷川敏郎.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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