電気自動車(EV)メーカーの米テスラは開発中のロボタクシー(無人タクシー)「サイバーキャブ」について、量販に向けて車両設計を抜本的に見直す用意がある。完全自動運転車というより、人間が操作する通常の車に近づけ、長年構想してきた低価格のEVとして位置付ける可能性もある。

テスラのロビン・デンホルム会長はブルームバーグ・ニュースとの28日のインタビューで、「もし必要なら、ステアリングホイールやペダルを備えることもできる」と語った。デンホルム氏の発言は、テスラの製品戦略における柔軟性を示している。

同氏はイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)への前例のない規模の報酬パッケージの正当性を株主に訴えている。マスク氏が完全自動運転車の市場投入を優先する方針を昨年前半に打ち出した際、テスラは多くの投資家から支持を得た。その一方で、リスクの高い挑戦だと懸念する向きもあった。

デンホルム氏はサイバーキャブについて、多くの投資家の間で通称「モデル2」と呼ばれてきたEVだと明らかにした。

サイバーキャブの試作車

マスク氏はちょうど1年前、ロサンゼルス近郊の映画スタジオの敷地内で、ハンドルもペダルもないサイバーキャブの試作車を初めて披露した。

その数週間後の決算説明会で、投資家から「ロボタクシー以外の低価格車はいつ出すのか」と問われると、マスク氏は不快感を示し、「通常の2万5000ドル(約380万円)の車を出すのは意味がない。それはばかげている。われわれの信念と完全に矛盾する」と答えた。

しかし、デンホルム氏が今回、来年から量産を予定しているサイバーキャブの仕様変更に前向きな姿勢を示したことで、テスラが1年前よりも柔軟な立場を取っている可能性が浮き彫りとなった。

背景には、マスク氏が米政府に働きかけてきたにもかかわらず、規制当局が長年の安全基準の緩和に慎重姿勢を崩していないことがあるとみられる。

デンホルム氏によると、テスラはこうした方針転換を過去にも行ってきた。「オリジナルのモデルYは、ステアリングホイールもペダルも付けない予定だった。しかし、何かを追加しなければ販売できないのなら、規制当局と協議して必要な対応を取る」と同氏は述べた。モデルYは、テスラの主力スポーツタイプ多目的車(SUV)。

原題:Tesla’s Cybercab Backup Plan: Sell It With a Steering Wheel (1)(抜粋)

--取材協力:Rick Clough、Shelly Banjo.

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