(ブルームバーグ):米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)は27日、米エネルギー省との官民共同プロジェクトで、同省傘下のオークリッジ国立研究所において自社製人工知能(AI)チップを搭載したスーパーコンピューター2台を開発すると発表した。エネルギー・科学研究における画期的成果を目指す。
AMDの発表文によると、スパコンの名称は「ラックス(Lux)」と「ディスカバリー(Discovery)」で、官民合わせた総投資額は10億ドル(約1520億円)の予定。開発にはオラクルのクラウドインフラ部門とヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)も参加する。
AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)はワシントンで開いた発表イベントで、「このパートナーシップは、産学官連携による米国のイノベーションのモデルになるだろう」と述べた。
オークリッジ国立研究所のスティーブン・ストライファー所長は記者団に対し、スパコンの用途の一つは原子炉のモデル化だとし、「AIは近い将来、原子炉認可プロセスの迅速化に寄与する可能性がある」と指摘した。核融合エネルギーや量子コンピューティングの研究開発、疾患がヒトの生体システムに与える影響のシミュレーションへの応用も期待されている。
今回発表された共同開発は、トランプ政権が7月に公表したAI行動計画に基づく政府支援型研究促進策の一環。スー氏は、オークリッジでのプロジェクトは、AI分野での米国のリーダーシップを維持しようとするトランプ大統領の思いに触発されたと話した。
スー氏は、ラックスとディスカバリーは世界で最高水準のエネルギー効率を誇る計算プラットフォームとなり、米国内の研究者がAI向けデータの共有やAIモデルの訓練・検証を行えると説明。これらのコンピューターは「科学的発見やオープンな協働、そして米国のリーダーシップと将来を形作る技術への揺るぎない取り組みを象徴するものだ」と語った。
発表会に同席したエネルギー省のライト長官によれば、AI分野で民間との共同の取り組みが今後増える見込みだが、施設の建設は民間のペースで進める方針。
ラックスはAMDのAIチップ「MI355X」を搭載し、来年の早い時期に稼働予定。「MI430X」プロセッサーを使用するディスカバリーは2028年に納入され、29年に同研究所の次期旗艦スーパーコンピューターとして本格稼働する見通し。
原題:AMD’s AI Chips to Power Supercomputers at Energy Department Lab(抜粋)
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