(ブルームバーグ):米国と中国が2020年に貿易戦争を巡り和解に達した際、米国の大豆輸出が過去最高水準近くまで急増した。しかし今回は、合意に達しても米国側が得る恩恵ははるかに小さい見通しだ。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は今週後半に韓国で会談し、通商交渉担当者がまとめた枠組み合意の条件を正式に承認する予定となっている。
ベッセント米財務長官は26日、この合意には米国産大豆の「相当規模」の購入が盛り込まれると述べた。
会談を前に期待感が広がり、大豆価格は上昇している。シカゴ市場では先物(26年1月限)が28日、前日比0.9%高の1ブッシェル=10.9525ドルで取引を終えた。最も取引の多い限月の終値としては1年3カ月ぶりの高値だ。
それでも、今回の合意が長期的な貿易構造の変化を覆す公算は小さい。中国はここ数年で米国産大豆への依存を大きく減らしており、最大の生産国ブラジルが急速に生産を拡大して、世界市場でのシェアを高めている。
一方、中国経済はここ数年減速しており、大規模な購入を約束できる余地も限られている。

ストーンX・ファイナンシャルによると、来年8月に終わる生産年度中に、中国が米国産大豆を1000万トン以上購入する必要はない見込み。ブルームバーグがまとめたデータによれば、予想通りなら、06年以降で最も少ない年間購入量となる。
ストーンXの主任コモディティーエコノミスト、アーラン・スーダーマン氏は27日の顧客向けリポートで、この水準を上回る分は「ボーナスになる」とコメントした。
大豆の買い手として世界一の中国は、現在の米国産収穫分を全く輸入せず、大半を南米から確保している。
米中合意が成立した場合、米国の輸出業者にとっては、再び記録的な収穫が予想されるブラジルによる供給が始まるまでの約2カ月間しか中国向け輸出の機会がない。
マレックス・グループのディレクター、ヴィニシウス・イト氏は「中国は以前と比べてはるかに交渉力を持っている」と指摘。来年1月までに中国が必要とする米国産大豆は800万トン以下との見方を示し、「ブラジル産の供給が潤沢で価格も安い場合、中国が米国から買い続ける理由はない」と述べた。
原題:China’s Soybean Pivot Limits Payoff From Any New US Trade Deal(抜粋)
--取材協力:Ben Westcott、Michael Hirtzer.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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