(ブルームバーグ):27日の米株式相場は続伸。米中が貿易合意に近づいているとの期待感でリスク資産が買われ、主要3指数は終値ベースでの最高値を更新した。一方、逃避需要の後退を受け、金や短期国債は値下がりした。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談が今週行われるのを前に、両国の通商交渉担当者らは複数の対立点で歩み寄った。また米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが予想される中、企業の利益見通しは一段と明るさを増している。
ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー氏は「市場は活気に満ちている」とし、「将来の収益力に対する強い楽観を反映している」と述べた。
今週は29日と30日に、マイクロソフトとアルファベット、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、アップルというハイテク大手5社が決算発表を行う。この5社でS&P500種株価指数の時価総額の約4分の1を占める。ハイテク大手7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数はこの日、2.6%上昇した。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「FRBによる利下げが見込まれる中、上昇相場が続くかどうかは今週発表される主要企業の決算にかかっているようだ」と指摘。「米中貿易協議で想定外のことが起きなければ、今の相場の流れは続く可能性がある」と述べた。
S&P500種は6875を上回って終了。3営業日の上げとしては5月以来の大きさとなった。
アマゾンは最大3万人のホワイトカラー職を削減する計画だと、ロイター通信が報じた。クアルコム株は一時22%高と急伸。同社は新型チップとコンピューターを投入し、高成長が続く人工知能(AI)データセンター市場に本格参入する。
トランプ大統領はこの日、「中国との合意について本当によい感触を持っている」と記者団に述べた。
しかし、国家安全保障を巡る根本的な対立や、トランプ氏が中核的な使命とする貿易の不均衡是正といった問題は手つかずのようだと、市場関係者は指摘する。中国の対米投資が依然として厳しく制限されていることも事態を困難にしている。
シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は、米中通商協議で一定の進展が見られたことなどを受けて「市場心理は改善した」とした上で、「根本的な問題が完全に解決されるか市場関係者はなお懐疑的だ」と指摘。「それでも市場はリスクオンのムードにある」と分析した。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「堅調な企業業績と米中貿易摩擦の緩和を背景に、相場は上昇基調を維持している」と指摘。「今後は一連の追い風が相場を支えるだろう。良好な季節要因や通商を巡る対立解消、財政出動、緩和的な金融政策などがプラス材料だ」と述べた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「良好な環境下で、これまでに発表された企業の第3四半期決算は堅調な内容だった」とし、「米国株は向こう数カ月で一段と上昇する」と予想。「S&P500種は2026年6月までに7300に達するとみている」と述べた。
国債
米国債市場では短中期債が下落(利回り上昇)。米中が貿易合意に近づいているとの楽観的な見方が強まり、安全資産への需要が減退したことを受け、特に短期債が大きく下げた。
2年債利回りは一時3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、約3.52%。一方、30年債利回りは一時3bp余り下げた。
今週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利下げが広く予想されているにもかかわらず、短期債利回りは上昇した。
ヴァンエック・オーストラリアのクロスアセット投資ストラテジスト、アンナ・ウー氏は「米中貿易関係が険悪だった時期の『安全資産一辺倒』を投資家が巻き戻しているため、米国債は下落している」と分析。
その上で、「米中協議が一段と進展するまで利回りは一定の範囲内にとどまる可能性が高い。大きな波乱が起きれば、再び条件反射的な買い戻しが起こるだろう」と予想した。
今週は市場を動かし得るイベントが数多く控える。この日実施された2年債入札(690億ドル規模)と5年債入札(700億ドル規模)はいずれも底堅い需要を集めた。28日には7年債入札(440億ドル規模)が行われる。
FOMC以外にも主要中銀が週内に金融政策を決定するほか、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談にも注目が集まっている。
BNYインベストメンツ・ニュートンの債券部門責任者、エラ・ホクサ氏は24日に発表された米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る伸びにとどまったこと、住宅やプライベートクレジットなど米経済の一部に懸念があることを踏まえると、利回りは現行水準付近で安定する可能性があると指摘。
一方、関税の影響が大きくなり始め、インフレリスクが高まることを考えると、リスクプレミアムは不十分にみえると述べた。
ブルームバーグテレビジョンでホクサ氏は「われわれは慎重な姿勢を取っている」と発言。「米国債市場はしばらく穏やかな値動きが続くかもしれないが、2026年にかけては展開が変わる可能性がある」と述べた。
外為
外国為替市場では、米利下げが今週予想される中でドル指数が反落した。円は対ドルで小幅安。前週末のニューヨーク時間終値を挟んで上下に振れる展開で、方向感は乏しかった。
円は朝方、ドルに対して一時0.2%高の152円57銭を付けた。その後、153円20銭近辺に押し戻された後、152円台後半での推移となった。
片山さつき財務相は来日したベッセント米財務長官と初めて対面での会談を行い、今後も緊密に協調していくことを確認したと明らかにした。日本銀行の金融政策は話題にならなかったという。
今週のFOMC会合での25bp利下げは既に織り込まれており、市場の関心は政府閉鎖に伴い経済データの発表が限られる中で、パウエルFRB議長がどういった発言をするのかに集まっている。
バンク・オブ・アメリカ(BoFA)のストラテジスト、アレックス・コーエン氏は「パウエル議長がタカ派寄りと解釈された場合、ドルはわずかに上昇する可能性がある。しかし、それが新たなドル高トレンドを生むこともないだろう」と述べた。
「大幅利下げは、労働市場に対する新たな不安や金融安定への懸念が生じたときのために、取っておくと考える」と指摘。「そうした状況は今のところ見られず、市場の織り込み度合いを超えるようなハト派的シグナルをパウエル議長が送るとは考えていない」と話した。
金
金スポット相場は続落。一時1オンス=4000ドルを下回った。米国と中国の通商協議を経て緊張が緩和したことを受け、逃避需要が後退した。
朝方に一時、前週末比3.4%下落して3971.52ドルを付けた。これまでの上昇は急ピッチで行き過ぎとの警戒感から、先週に急上昇が一服した流れを引き継いだ。20日には4381.52ドルと、過去最高値を更新していた。
米中の貿易合意は、ここまで金相場を押し上げてきた経済リスクや地政学的緊張をいくらか和らげる可能性がある。
サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は「金は長らく先送りされていた調整局面に入っている。きょうの下落要因は通商協議に関する前向きな報道だ」と指摘。
「今年の高値は既に付けたかもしれない。市場参加者がやや慎重姿勢を強め、株式相場が上昇基調を続ける中、金スポット相場の調整がより深くなれば、回復が遅れる可能性がある」と述べた。
ワールド・ゴールド・カウンシルの市場ストラテジスト、ジョン・リード氏は、京都で開催のロンドン貴金属市場協会(LBMA)の会議で、中央銀行の需要が以前ほど強くなく、より大幅な調整となれば機関投資家は歓迎するかもしれないと指摘。1オンス=3500ドルが「金相場にとっては健全な水準だろう。それでもまだ途方もなく高い価格だ」と同会議での会話を引き合いに出して語った。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時57分現在、前営業日比107.55ドル(2.6%)安の4005.50ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、118.10ドル(2.85%)安の4019.70ドルで引けた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は先週末の終値を挟んでもみ合いとなった末、小幅に続落。米中貿易協議で進展が見られる中、全般的な供給見通しが意識された。
供給の先行きは依然として不透明だ。米国は先週、ウクライナでの戦争を巡りロシアへの圧力を強める手段として、ロシア石油大手のロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えた。
BOKファイナンシャルのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「市場は一息ついている」と指摘。「米中の交渉は続いているが、正式な合意はまだ成立したわけではない。対ロシア制裁は一部供給の停止につながり得るが、同国産原油の大半は最終的に行き先を見つけるだろう」と述べた。
米政権の狙いはロシアの石油輸出をより困難で高コスト、かつリスクの高いものにする一方で、世界の原油市場を混乱させるような急激な供給ショックを避けることにあると、事情に詳しい関係者は週末に語った。
こうした制裁措置を背景に、原油価格は先週、5カ月ぶりの安値水準から持ち直した。ただ、この反発は極端なポジションの偏りに一部起因していた可能性が高い。トレーダーらは今後数カ月の供給過剰を見込んで、北海ブレント原油への売りポジションを記録的な水準まで積み上げていた。
TDセキュリティーズのコモディティーストラテジスト、ダニエル・ガリ氏によれば、商品投資顧問業者(CTA)が今後、価格の上昇モメンタムを加速させる見通しだ。
「最近の制裁措置による供給への影響は最小限にとどまるとみている。ただし、短期的にはクオンツファンドのショートポジションが価格動向を左右するだろう」と同氏は述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前営業日比19セント(0.3%)安の1バレル=61.31ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は0.5%安の65.62ドル。
原題:Stocks Climb on Hopes US-China Talks Will Go Well: Markets Wrap
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Oil Steadies With Focus Shifting From Trade to Sanctions Impact(抜粋)
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