携帯電話向け半導体で最大手の米クアルコムの株価が上昇し、1年3カ月ぶりの高値を付けた。新型チップとコンピューターを投入し、高成長が続く人工知能(AI)データセンター市場に本格参入すると発表したことを受けた。同市場を席巻するエヌビディアに挑む構えだ。

新型チップ「AI200」は来年出荷を始める予定。単体の部品として提供されるほか、既存マシンに追加できるカード型や、クアルコム製のサーバーラック一式の構成要素としても供給する。最初の顧客はサウジアラビアのAIスタートアップ、ヒューメインで、2026年に同チップを用いた大規模AIデータセンターを稼働させる計画だという。

クアルコムの27日発表によれば、27年には次世代チップ「AI250」を投入する計画となっている。チップ単体で使用する場合、エヌビディアなど他社のプロセッサーを搭載した装置にも組み込めるという。

発表を受けてクアルコム株は急伸。一時22%高と、日中ベースでは19年4月以来の大幅高となった。終値では11%高の187.68ドルと、4月以来の大幅上昇を記録し、24年7月以来の高値を付けた。クアルコムの基盤技術の一部を開発する英半導体設計会社アーム・ホールディングスもニューヨーク市場で4.7%高の178.62ドルとなった。

 

クアルコムは、AIモデルの生成や実行に用いられるAIアクセラレーター市場への参入を目指している。この分野はすでに半導体産業の勢力図を塗り替えており、市場を主導するエヌビディアは世界で最も企業価値の高い会社となった。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、オスカー・エルナンデス・テハダ氏は、ヒューメインとの契約はクアルコムの新型AIアクセラレーターに「初期の手応え」が見られることを示しているとリポートで指摘。「エヌビディアの支配的地位に本格的な脅威を与えると判断するのは時期尚早だが、5000億ドル規模のAIアクセラレーター市場でわずかにシェアを伸ばすだけでも、数十億ドル規模の増収につながる可能性がある」と述べた。

クリスティアーノ・アモンCEO

クリスティアーノ・アモン最高経営責任者(CEO)の下、クアルコムは、かつてのような急速な販売拡大が見込めなくなったスマートフォン市場への依存度軽減に取り組んでいる。自動車やパソコン向けの半導体分野に事業を広げてきたが、プロセッサー市場で最大の成長分野となったこの領域で製品を投入するのは今回が初めてだ。

同社のシニア・バイスプレジデント、ドゥルガ・マラディ氏は「当社はこの分野で静かにかつ着実に力を蓄えてきた」と語った。同氏によると、クアルコムは現在、大口需要家である主要テクノロジー企業各社と協議を進めているという。

マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズなどからの受注を獲得できれば、クアルコムにとって新たに重要な収益源となる。

原題:Qualcomm Soars After Taking Aim at Nvidia With New AI Chips (2)(抜粋)

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