電気自動車(EV)メーカーの米テスラが22日に発表した7-9月(第3四半期)決算では、利益がウォール街の予想を下回った。EV販売台数は過去最高を記録したものの、連邦政府の政策転換とコスト上昇が業績を圧迫していることを示唆した。

発表資料によると、7-9月期の調整後利益は前年同期比31%減の1株当たり50セント。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想平均値は54セントだった。一方、売上高は281億ドル(約4兆2700億円)で、市場予想を上回った。

今回の結果は、トランプ大統領が政策の大幅転換を進める中で、米自動車業界全体を直撃しているコスト上昇の影響をテスラも免れなかったことを示している。同社の営業費用は50%増の34億ドルに膨らんだ。米国の関税による影響は約4億ドルに達するという。

ガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントの社長兼CEOを務めるロス・ガーバー氏は、テスラが中核のEV事業を「おろそかにしている」のは戦略的な誤りだと指摘した

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、人工知能(AI)、ヒューマノイドロボット、自動運転技術を中心とした将来構想を掲げており、投資家向け決算説明会でもその方針を強調した。投資家はおおむねマスク氏の構想を支持しており、株価は年初来で22日終値までに8.7%上昇している。

しかし、これらの事業の開発スケジュールやコスト負担には不透明感がくすぶる。車両販売というテスラの中核事業も、競争激化や米国の財政優遇措置の段階的縮小を背景に再び厳しい目が向けられている。

CFRAのシニア株式調査アナリスト、ギャレット・ネルソン氏は「テスラの短期および中期の利益成長軌道に多くの疑問が生じている時期に入っている」と述べた。

テスラのバイブハブ・タネジャ最高財務責任者(CFO)は、競争や関税が同社にとって障害となっていることを認めた。

テスラ株はニューヨーク時間午後6時5分(日本時間23日午前7時5分)時点の時間外取引で4.1%安。マスク氏が決算説明会での冒頭発言を終えた後も株価は下げ幅を拡大し、投資家が詳細開示の少なさに失望した様子がうかがえた。

SLCマネジメントのマネジングディレクター、デク・マラーキー氏は「投資家を鼓舞する材料はほとんどない」と指摘した。

テスラは前四半期と同様、世界の貿易や財政政策の変化による事業への影響を「測定するのは難しい」との見解を繰り返した。また、「貿易・関税・財政政策の変化による短期的な不確実性」が続いていると警告した一方、ロボティクスなど将来の事業分野への投資を進めていると説明した。

ブルームバーグのアナリスト調査では、テスラの納車台数は2年連続で減少すると予想されている。

同社は今月、7-9月期の販売が過去最高となったと発表した。米国で1台当たり7500ドルのEV購入税控除制度が9月末で終了する前に駆け込み需要が高まったことが主力の自動車事業を一時的に押し上げた。

7-9月期は、他の自動車メーカーへの規制クレジット売却収入が4億1700万ドルと、前四半期からわずかに減少した。トランプ政権下での政策変更により、こうしたクレジットの需要は減少しており、テスラは同事業の縮小が見込まれるとしている。

マスク氏は、6月にテキサス州オースティンで開始したロボタクシー事業について、必要な認可が得られれば年末までに最大10都市圏に拡大できるとの見通しを示した。また年内にはオースティンで大半のロボタクシーから安全を監視するスタッフを外す方針も明らかにした。当地では開始当初10-20台で稼働していたが、現在の稼働台数は不明。

フリーキャッシュフローは約40億ドルと前年から大幅に増加し、アナリスト予想平均の12億5000万ドルを大きく上回った。

原題:Tesla’s Profit Tumbles After Costs Undermine Record EV Sales(抜粋)

(詳細を追加して更新します)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.