(ブルームバーグ):原油先物は23日の取引で、米政府がロシアの主要石油会社に対する制裁を発表したことを受けて急上昇した。米政権の制裁措置は、ロシアのプーチン大統領にウクライナでの戦闘終結の交渉を迫る新たな試みとなる。
北海ブレント原油先物は一時5.5%上昇し、1バレル=66ドルを超えた。2営業日の上げは7%となり、2年ぶりの大きさ。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物も一時62ドル近くまで上昇した。
米国はロスネフチとルクオイルのロシア石油大手2社を制裁対象リストに追加した。「ウクライナでの戦争を終結させるための和平プロセスに対するロシアの真剣な取り組みの欠如」を理由に挙げている。
今回の制裁を受け、インドの石油精製会社が調達するロシア産原油はほぼゼロに減少する見通しだ。製油各社の幹部が制裁で輸入継続は不可能になると、匿名を条件に語った。
制裁措置は、トランプ大統領にとっては方針転換を意味する。トランプ氏は先週、今後数週間以内にプーチン大統領と会談する予定だと発表し、ロシアは戦争を終わらせたがっていると繰り返し発言。しかし21日には、プーチン氏との無駄な会談はしたくないと述べ、22日には「キャンセルした」ことを明らかにした。

サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は、「これは大事だ。最近まで続いていた供給過剰見通しの変更を強いられ、トレーダーはポジションを中立に戻すか、強気にすら転じざるを得ないかもしれない」と語った。
欧州連合(EU)もロシアのエネルギー業界を標的とした新たな制裁パッケージを採択し、ロシアに対する圧力を強めた。
海上で輸送中の原油量は既に過去最高の水準にある。国際エネルギー機関(IEA)は、来年は日量約400万バレルの供給過剰になると予想している。
米欧の制裁の影響を潤沢な供給がある程度は緩和しそうだが、国内石油需要の3分の1強をロシアに依存するインドにとって、代替供給源の確保は容易ではない。同様に、国内需要の2割をロシアから輸入する中国でも、米国の制裁発表に衝撃が走った。
INGグループの商品戦略責任者ウォーレン・パターソン氏(シンガポール在勤)は、今回の制裁について「トランプ氏のロシアに対する姿勢の転換を示すものであり、将来的により厳しい制裁への道を開き、最終的にはロシア産原油の流れに影響を及ぼす可能性もある」と指摘。
「不確実なのは、これらの制裁がどれほど効果的であり」、輸出に「実際にどのような影響を及ぼすのかという点だ」と語った。
ロシア外務省のザハロワ報道官は23日の定例記者会見で、同国は制裁に対する「永続的な耐性を得ている」ため、ロスネフチとルクオイルの制裁で問題が生じるとは考えていないと主張。制裁は「逆効果」だとした。
制裁措置の発表後、トランプ氏は来週韓国で予定されている中国の習近平国家主席との会談で、中国によるロシア産原油の購入を巡り協議する考えを示した。
トランプ氏はまた21日、インドがロシア産原油の購入を段階的に縮小すると強調し、この問題についてインドのモディ首相と2週連続で直接協議したと述べていた。
ウクライナ侵攻を理由に各国がロシアと距離を置く中、中国とインドはロシア産原油の最大の買い手となった。トランプ氏はロシアから原油を買い続けるインドに高関税を課したが、中国に対してはロシアとの取引を巡りそうした措置を講じていない。

ブレント原油は20日に付けた5カ月ぶりの安値から反発していた。売られ過ぎの兆候が示されていた上、米国の原油在庫が減少し供給過剰懸念が和らいだことが背景にある。ただ、世界的な供給過剰の兆しで下落圧力がかかっており、この日の上昇でも月間ではなお3カ月連続の下落となるペースだ。
北海ブレント先物12月限はロンドン時間23日午前11時55分(日本時間午後3時40分)時点で5.2%上昇し65.84ドル。WTI先物12月限は5.7%高の61.81ドル。
原題:Oil Jumps as Trump Steps Up Pressure on Russia With Sanctions、Russia Calls New US Sanctions ‘Counterproductive’(抜粋)
(相場を更新し、第6-第9段落に情報を加えます)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.