(ブルームバーグ):自民党と日本維新の会は20日、新たな連立政権の樹立で合意した。臨時国会で行われる首相指名選挙で維新は自民の高市早苗総裁に投票する。高市氏が女性初の首相に選出されることが確実な情勢だ。
高市氏と維新の吉村洋文代表、藤田文武共同代表が国会内で会談し、連立政権合意書に署名した。
高市氏は共同記者会見で、「とにかく今、安定した政治が大事だ」と指摘。連立合意は「大変大きな一歩だ。これから日本を前に進めるために精いっぱい働く」と語った。吉村氏も「手を取り合って国難に立ち向かい、前へ進める政治をしていきたい」と述べた。
21日午後1時からの衆院本会議で行われる首相指名選挙で、維新の所属議員全員が高市氏に投票すれば自民と計231議席になり、過半数の233に迫る。自民は無所属議員の一部などにも協力を呼び掛けており、1回の投票で過半数を得る可能性がある。
維新は当面、閣僚を送らない「閣外協力」の形式で連立に参加する予定だが、公明党の連立離脱で危ぶまれていた高市氏の政権基盤は一定程度安定するとみられる。
連立政権合意
連立政権合意では、最大の焦点だった国会議員定数削減に関しては、「1割を目標に衆院定数を削減するため、今年の臨時国会で「議員立法案を提出し、成立を目指す」とした。維新が廃止を求めた企業・団体献金の扱いは協議体を設置して検討し、2027年9月までの高市氏の自民総裁任期中に結論を得るとした。
食料品にかかる消費税率を2年間ゼロ%とする案については「法制化について検討を行う」とするにとどめ、実施期限は明記しなかった。自民が参院選で掲げた一律給付は行わず、電気ガス代の補助をはじめとする物価高対策を行うとした。
維新は自民に対し、首都機能を代替する「副首都」構想、社会保障制度改革なども盛り込んだ12項目の政策要望を提出。両党で詰めの調整を進めていた。
市場の動き
20日の日本市場では日経平均株価が1600円余り上昇し、終値で初めて4万9000円台を付けた。新政権への期待が株式相場を押し上げたとみられる。
一方、債券は先物や中長期債が下落(金利は上昇)。円相場は対ドルで151円台前半まで売られた後、日本銀行の高田創審議委員が利上げの「機が熟した」と講演で述べたのを受け、150円台後半に戻している。
みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは20日付リポートで、高市氏が首相に就く公算が大きく、金融市場は「高市トレード」(金利曲線の傾斜化・株高・円安)的な動きになると予想していた。
首相補佐官
維新は閣僚を送り込まないものの、遠藤敬国対委員長を首相補佐官に起用する案が浮上していると共同通信が報じている。
吉村代表は20日昼、テレビ朝日の番組で、政権への関わり方について「基本的に考えているのは大臣は出さず閣外という形で連立政権を樹立する」と指摘。遠藤氏の首相補佐官起用案については「最終的には首相の判断」と指摘。政策実現を考えると官邸や各省庁との連携で重要なパイプ役が必要であり、遠藤氏は適任だとした。
政治とカネ
他党からは自民、維新の対応に疑問を投げ掛ける声も出ている。
公明党の斉藤鉄夫代表は20日、自民と維新の協議で定数削減が焦点となり、「政治とカネの問題がテーマのはずだったが、関心が移るようになった。すり替えなのではないか」と語った。削減自体には反対しないが、衆院では比例代表と小選挙区両方を対象とすべきだとの考えも示した。日本外国特派員協会での会見で語った。
こうした指摘に対し、藤田氏は記者会見で、自民とは衆院定数の1割削減で合意したが対象を比例代表とは文書に明記していないと説明。企業・団体献金廃止と議員定数削減は「どちらも結党以来掲げており、その軽重はない」と述べた。

(高市、吉村両氏の共同記者会見を受け、更新しました)
--取材協力:日高正裕、長谷川敏郎、村上さくら、広川高史、山中英典、氏兼敬子、青木勝、野原良明.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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