世界の金融機関が、急拡大する台湾のウェルスマネジメント市場を巡り競争を激化させている。その規模は約8兆ドル(約1200兆円)だ。台湾政府は、急増する個人資産の活用に向けて資産運用に関する規制を緩和している。

UBSグループやHSBCホールディングス、BNPパリバなどの金融機関が、台湾の港湾都市、高雄に7月に設けられた資産運用特区でのプレゼンス拡大に向け、人材採用を加速している。

UBSは来年、台湾での顧客対応担当を10-15%増員するとともに、高雄でのミドル・バックオフィス業務を拡充して資金フローを管理する計画だ。スタンダードチャータードは過去3年間で台湾を拠点とするウェルスマネジメント担当の専門職を3倍に増やしており、今後数カ月にわたり採用を継続する。

HSBCは高雄での試験的な業務支援に向け現地のウェルスマネジメントチームをさらに拡充する考え。BNPパリバは、今後2年間に台湾全体で顧客担当者を約15人加える方針だ。

台湾の高雄

人工知能(AI)の発展を支える半導体への需要が世界的に拡大する中、台湾では富裕層の資産が急増している。規制が緩和された特区の新設は、こうした資産への金融機関によるアクセスを支援する狙いがある。

台湾は高い税率や厳しい外為規制、中国による侵攻リスクなど資産運用上で不利な条件が複数あり、台湾の個人資産の40%が香港やシンガポールなど海外の金融センターに流出していると推定されている。台湾政府は特区新設により、こうした状況を打開したい構えだ。

UBSの台湾責任者ヘンリー・スー氏は「現地のテクノロジー企業がAIの成長トレンドを活用し、大きな富が生まれている。過去数年間で株式市場に投資してきた台湾人もいる。高雄の特区は規制当局による最初の一歩であり、今後も順次、規制緩和が進むとみられる」と指摘した。

UBSの台湾部門は、過去2年で運用資産残高を倍増させた。「多くの世界的な銀行が現在この市場に積極的に参入しており、台湾のウェルス市場が主要プレーヤーにとって注力したい魅力的な市場であることを示している」とスー氏は語った。

高雄にある台湾積体電路製造(TSMC)の工場

原題:UBS, HSBC Hire Aggressively in $8 Trillion Taiwan Wealth Market(抜粋)

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