農林水産省が近く発表する業者間でのコメの取引価格が全銘柄平均で3万6000円台後半の見通しであることがJNNの取材で分かりました。3万円を優に超える前代未聞の価格。背景に何があったのか?集荷業者を取材しました。

10月に入り、いよいよ終盤となってきた新米の刈り取り作業。

小池農園 小池貴史さん
「(去年はコメの)収量がだいぶ半減してしまったが、今年は病害虫の防除を徹底した結果、平年並みの収量はできた」

農水省が発表した今年の「コメ予想収穫量」は、去年より68万トン以上増える見込みに。

小池農園 小池貴史さん
「一番理想は高すぎず、安すぎずの価格で安定してくれれば一番いい。果たして高止まりの米価がどの辺まで続くのか、来年のいつ頃まで続くのか、それが気になるところですね」

複数の関係者によると、近く発表される予定の9月の業者間でのコメの取引価格=「相対取引価格」は、全銘柄平均で60キロあたり3万6000円台後半の見通しであることがJNNの取材で分かりました。

去年の同じ時期と比べて1万4000円ほど高くなっていて、過去最高値です。今年の新米の取引が過熱し、今後、価格が高止まりすることが浮き彫りになった形です。

千葉にある米穀店。

米穀店社長
「新米が売れない。高くて売れない」

高水準の収穫量とは裏腹に、倉庫に山積みされていた新米。

米穀店社長
「コメというのは安いコメからどんどん出ていく。どんどん消費されていく。だから業者もみんな、安いのから先につかっていくわけです。高いのが残るわけですよ」

売れないほど高くなったコメの価格。背景にあったのが、「集荷競争」。

今回、熾烈な実態を民間の集荷業者が明かしてくれました。

民間業者
「例年の倍ぐらいの金額を持って買いつけているワケだから、ちょっと感覚が…。買っている方も怖いですね」

去年のコメ不足を念頭に、コメの確保に動いた民間業者。ライバルとなったのはJAです。

民間業者
「いろんな情報が県外のところにも入ってくる。(JAが)いくらで買いつけたという情報はくるんですけど、正直、その金額は到底出せなかったですね」

JAがコメ農家に前払いする「概算金」。今年は量を確保するために、例年と比べ、大幅にアップしました。これに対し、民間の集荷業者なども買い負けることがないようさらに高い金額を提示。

結果、JAの「概算金」も追加で吊り上がってしまったのです。

JAと民間の集荷業者、そこに一般の消費者も加わり、さらなる激戦となったといいます。

民間業者
「(集荷業者は)悪者みたいというか、我々も無理してやっている。ある程度、理解をしてもらった方がいいかもしれない。仕入れ値をもっと下げれば買えないし、仕入れ値を高くすれば今度は売れなくなる。ジレンマですよね」

例年より高い価格で集荷された今年の新米。売れないからといって簡単に値下げするわけにもいかないのです。

米穀店社長
「損切りするにも限度があるでしょう。そんなに大きく損したらつぶれちゃう。そこまではできないでしょ」

予想通り、今年のコメが豊作で仮に余った場合、「来春には価格が下がる」との指摘もあります。

米穀店社長
「いつ暴落するか分からないじゃん。まったく分からない、誰も分からない。だからおっかないんだよ。コメ博打みたいなもんだよ」

生産者も、集荷業者も、米穀店も、消費者も、誰も得をしないコメの価格高騰。早急な抜本的対策が求められています。