財務省が7日に実施した30年利付国債入札は、投資家需要の強弱を示す応札倍率が3.41倍と過去12カ月の平均(3.37倍)を上回った。債券市場では「無難」な結果との声が上がり、一定の安心感が出ている。

応札倍率は前回(3.31倍)も上回った。最低落札価格は99円10銭(市場予想99円15銭)、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は17銭(前回18銭)になった。長期国債先物12月物は入札結果を受けて下げ幅を縮小している。

SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは「高市早苗自民党総裁の誕生で財政拡張への警戒が強い中で行われた入札だったが、利回り水準の上昇により相応の需要があり、無難な結果になった」と語る。ただ、自民党が積極財政を志向する国民民主党と連立する可能性があることから警戒感は根強く、利回り曲線のスティープ(傾斜)化の地合いは当面継続するとみる。

自民党の新総裁に高市氏が就任したことを受け、日本銀行の利上げが先送りされるとの見方から年限が短い金利が低下する一方、財政拡張懸念から超長期金利の上昇圧力が高まっている。7日の新発30年国債利回りは一時3.345%と過去最高を連日で更新した。

財政懸念の高まりを背景に欧州やアジア諸国の多くで国債利回りが上昇し、6日の米長期金利も上昇していた。7日の時間外取引でも上昇傾向にあったが、30年債入札の結果を受けて一時低下に転じた。

パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は、30年債入札は「金利がかなり上がり、価格が安くなって買いやすさがあった」と語る。ただ、財務相や税制調査会長など、財政政策の「鍵となる人事が決まっておらず、安心してどんどん買っていく状況にはない」とみている。

一方、ファイブスター投信投資顧問の下村英生シニア・ポートフォリオ・マネジャーは「党の人事を見ても、財政政策でむちゃをする顔ぶれではない」と指摘。超長期債の急落は2、3日で終わり、年末の30年金利は今より「明らかに下がっている」と予想した。

(第5段落以降に米長期金利の動きやコメントを追加して記事を更新します)

--取材協力:清原真里、近藤雅岐、山中英典.

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