円キャリートレード復活の機運が高まっている。自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し次期首相への就任がほぼ確実視され、日本銀行の利上げペースが鈍化するとの観測が広がったためだ。

6日の外国為替市場では、円が主要通貨に対して軒並み下落。景気刺激策に前向きな高市氏の姿勢が、日銀利上げのタイミングの遅れにつながるとの見方が広がった。

実際に利上げが先送りされれば、低金利の円を調達してブラジル・レアルやオーストラリア・ドルといった金利がもっと高い通貨を買うキャリートレードが再び活気づく可能性がある。

ラボバンクの通貨戦略責任者ジェーン・フォーリー氏は、市場は短期的に「円キャリートレードが復活したと結論づける可能性が高い」と指摘した。

自民党総裁選の結果を受け、円相場は6日に対ドルで一時2%下落。一方、財政拡張懸念から、債券相場も超長期債で売りが広がった。

多くの市場関係者は、高市氏がこれまで日銀の利上げの動きを批判してきた経緯を踏まえ、首相に就任すれば金融引き締めペース鈍化を促す可能性があるとみる。

高市氏の経済ブレーンの1人である本田悦朗元内閣官房参与は6日のインタビューで、日銀の利上げ時期に関して、今月の金融政策決定会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示した。

こうした状況から市場では日銀の利上げ観測が大きく後退。スワップ市場で足元では、30日の金融政策決定会合での利上げ確率が19%と織り込まれている。自民党総裁選前の段階では約57%だった。

世界の中でも目立って低い政策金利の引き上げペースが鈍化すれば、円は引き続き安価な調達通貨としてキャリートレードの投資家を引き付けることになりそうだ。

みずほ銀行のシニア為替ストラテジスト、中島將行氏は、円売りが一段と進む可能性が高いとみる1人だ。同氏は、円が対ユーロで180円に向かって下落する公算が大きく、他のアジア通貨に対しても下落圧力に見舞われそうだとの見方を示している。

中島氏は、高市氏が円安は日本経済に悪影響を与えないと主張し続け、日銀が利上げすべきでないという姿勢を明確にすれば、キャリートレードは再開し、円は広範に下落する可能性があると述べた。

高市氏勝利に対する日本の市場の反応

原題:Yen Carry Trade Is Back on Radar After Takaichi Jolts Markets(抜粋)

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