自民党と連立政権を組んできた公明党との関係がぎくしゃくしている。高市早苗総裁は執行部の人事を決めたが、公明との連立政権合意に向けた調整が難航。7日の協議では結論に至らず、改めて話し合うことになった。

高市早苗氏

高市氏と鈴木俊一幹事長ら自民の新執行部は7日午後、国会内で斉藤鉄夫代表ら公明幹部と会談し、連立合意に関する協議を行った。

斉藤氏は、事前に伝えていた懸念事項のうち、歴史認識や外国人政策については高市氏から詳細な説明があり、「われわれと認識を共有できたところもたくさんあった」と記者団に語った。

ただ、政治とカネを巡る問題に関しては、公明側がなお全容解明や企業・団体献金の規制強化に取り組む必要性を指摘したが、なお調整が必要になったという。

自公は新内閣発足時に連立継続のための合意文書を確認している。調整が難航している背景には「保守中道路線」を掲げる公明が党内右派を支持基盤にする高市氏を警戒する事情がある。仮に連立継続で合意できても、公明との関係は政権の不安材料となりそうだ。

高市氏は記者団に対し、具体的な内容は明らかにしなかったが、一致できなかった点について公明と改めて協議すると説明した。

自公のきしみは高市氏が意欲を示す連立の枠組み拡大に向けた野党との交渉にも影響を与えている。国民民主党の玉木雄一郎代表は7日の記者会見で、自民への対応について、自公の関係がどうなるのかを踏まえて判断するとの考えを示した。

国民に関しては、高市、玉木両氏が5日に会談していたと朝日新聞などが報じていた。記者団から事実関係などについて問われた玉木氏は「会った覚えはない」と否定。高市氏は「特に私から申し上げるべきことは何もない」と述べるにとどめた。

斉藤鉄夫氏

マーケットコンシェルジュ代表の上野泰也氏は7日の電話取材で、公明は1999年に自民と連立して以来、野党時代も含めて協力関係を維持しており、党勢も低下傾向にある中で連立解消には「かなり政治的なパワーが必要となる」と指摘。連立離脱問題を「今市場が大きな材料にしている感触は受けない」とした。

7日の東京株式相場は午後に失速。日経平均はほぼ横ばいながら再び最高値を更新した。債券は高市氏の総裁選勝利以降、財政拡張懸念から超長期債中心に売られたが、この日行われた30年利付国債入札が無難な結果となり買い戻された。外国為替市場の円相場は対ドルで150円台後半に下落した。

高市氏は7日、自民の新執行部人事を公表した。副総裁に麻生太郎元首相が復帰したほか、幹事長に鈴木氏、総務会長に有村治子参院議員と麻生派議員を起用。麻生氏が主導して党運営に当たる体制が明確になった。

政調会長には総裁選で争った小林鷹之元経済安全保障担当相、選挙対策委員長には高市氏と近い古屋圭司衆院議員を充てた。また、幹事長代行には旧安倍派の萩生田光一元政調会長が就任した。

物価高対策

自民が公明との連立合意を確認し、首相に就任すれば、新執行部は物価高対策の策定に取り組むことになる。鈴木氏は「物価高対策、早急に対応を進めなければいけない」とし、野党の意見も聞きながら調整を急ぐ考えを示した。

物価高対策を巡っては規模に加え、財源に赤字国債の増発も含めるかが焦点となる。高市氏は総裁選で「責任ある積極財政」を掲げ、経済成長を重視する姿勢を鮮明にさせている。物価高対策のための財源に関しても、現在の税収の余剰分を充てつつも、場合によっては赤字国債増発もやむをえないとの見解を明らかにしていた。

一方、麻生、鈴木両氏は財務相経験者で財政規律を重視する議員と位置付けられている。赤字国債を増発するかなど補正予算の財源などを巡って意見調整が必要な場面が出てくる可能性もあるが、鈴木氏は「積極財政派と財政規律重視派は一対一で対立してるということではない」と指摘。一致点を見いだすことは可能と強調した。

(自民の高市総裁、公明の斉藤代表の発言を追加し、更新しました)

--取材協力:長谷川敏郎、日高正裕、山中英典.

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