自民党と連立政権を組んできた公明党との関係がぎくしゃくしている。高市早苗総裁は新執行部の人事を決め、新体制が始動したが、来週に想定される首相指名選挙を前に公明との連立維持のための協議が難航する可能性がある。

自民の鈴木俊一幹事長は7日の就任会見で、公明との信頼関係は「基本的にしっかりしたものがある」と指摘。公明側から示されている懸念に関しても丁寧に説明し、払しょくに努める考えを強調した。

高市早苗氏

公明の斉藤鉄夫代表は4日、高市総裁との会談で、連立継続の合意に先立ち、政治とカネの問題への対応や靖国問題、外国人政策などについて自民新執行部と協議する必要があるとの考えを示した。「いろいろな問題について心配を持っている点について率直にお伝えした」として記者団に明らかにした。

自公は新内閣発足時に連立継続のための合意文書を確認しているが、公明が政権運営への懸念事項を公表するのは異例だ。「保守中道路線」を掲げる公明にとって党内右派を支持基盤にする高市氏への警戒感がある。仮に当面の連立継続で合意できても、公明との関係は政権の不安材料となりそうだ。

高市、鈴木両氏ら新執行部は7日午後、公明側と面会する予定。鈴木氏は今後、公明との連立合意に向けた協議を丁寧に進める考えを示した。

斉藤鉄夫氏

マーケットコンシェルジュ代表の上野泰也氏は7日の電話取材で、公明は1999年に自民と連立して以来、野党時代も含めて協力関係を維持しており、党勢も低下傾向にある中で連立解消には「かなり政治的なパワーが必要となる」と指摘。連立離脱問題を「今市場が大きな材料にしている感触は受けない」とした。

7日の東京株式相場は続伸。高市氏の経済政策による国内景気の改善期待が続いている。一方、債券市場は財政拡張懸念から超長期債を中心に売りが優勢で、新発30年債利回りは過去最高を更新した。外国為替市場の円相場は対ドルで150円台半ばに下落して推移している。

高市氏は7日、自民の新執行部人事を公表した。副総裁に麻生太郎元首相が復帰したほか、幹事長に鈴木氏、総務会長に有村治子参院議員と麻生派議員を起用。麻生氏が主導して党運営に当たる体制が明確になった。

政調会長には総裁選で争った小林鷹之元経済安全保障担当相、選挙対策委員長には高市氏と近い古屋圭司衆院議員を充てた。また、幹事長代行には旧安倍派の萩生田光一元政調会長が就任した。

物価高対策

自民が公明との連立合意を確認し、首相に就任すれば、新執行部は物価高対策の策定に取り組むことになる。

鈴木氏は「物価高対策、早急に対応を進めなければいけない」とし、野党の意見も聞きながら調整を急ぐ考えを示した。

こうした中、高市氏が国民民主党の玉木雄一郎代表と東京都内で会談していたことが分かったと共同通信が6日報じた。今後の政策協議を視野に、連携を模索したとみられるという。玉木氏は7日午後1時から記者会見を行う予定で、今後の政策協議について発言するとみられる。

物価高対策を巡っては規模に加え、財源に赤字国債の増発も含めるかが焦点となる。高市氏は総裁選で「責任ある積極財政」を掲げ、経済成長を重視する姿勢を鮮明にさせている。物価高対策のための財源に関しても、現在の税収の余剰分を充てつつも、場合によっては赤字国債増発もやむをえないとの見解を明らかにしていた。

一方、麻生、鈴木両氏は財務相経験者で財政規律を重視する議員と位置付けられている。赤字国債を増発するかなど補正予算の財源などを巡って意見調整が必要な場面が出てくる可能性もあるが、鈴木氏は「積極財政派と財政規律重視派は一対一で対立してるということではない」と指摘。一致点を見いだすことは可能と強調した。

(自民党の鈴木幹事長らの発言を追加し、更新しました)

--取材協力:長谷川敏郎、日高正裕、山中英典.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.