(ブルームバーグ):自民党総裁選は4日に投開票日を迎える。立候補した5人は少数与党下の政権運営安定化に向け、いずれも野党との協力や連立の枠組みを拡大する可能性を探っている。
自民、公明両党の議席数は衆院で220、参院で121と、過半数には衆院で13議席、参院で3議席不足している。現実的な連携相手として浮上するのが立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の各党だ。3党のいずれか1党が仮に連立に加われば、両院で過半数を確保できるからだ。
5候補のうち高市早苗前経済安全保障担当相は首相指名選挙までの連立合意を模索する姿勢を示しているが、時間的な制約がある。10月末には東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が予定されている上、トランプ米大統領の訪日の可能性も報じられている。
小泉進次郎農相や林芳正官房長官らは、まずは政策協議に取り組みながら、連立の可能性を模索したい考えだ。
正式な連立に至るかはなお不透明だが、当面は政策ごとの協力が不可欠との見方が広がっている。野党各党は消費税の引き下げを求めており、自民党が参院選の公約に掲げた現金給付案よりもコストがかかる対応策だ。財政懸念で国債利回りが上昇傾向にある中、新総裁は野党の政策実現に必要な歳出圧力への対応も必要となる。
与党と立民、維新、国民の3党との連携の可能性について探った。夏の参院選で躍進した参政党は衆院で3議席しか保有しておらず、現時点では自公と連立を組んでも衆院の過半数には届かない。
首班指名選挙は10月15日に行われるとの報道もある。現時点では野党各党が共通の候補で足並みをそろえる動きはみられない。
日本維新の会(衆院35議席、参院19議席)

吉村洋文代表は、新総裁から連立入りの打診があれば協議することは当然だと明言している。参院選で掲げた社会保障制度の改革と副首都構想についての政策協議がまず必要だという。
自民・公明との協力実績もある。現行年度の予算案には、高校無償化と社会保険料の引き下げを条件に、自民党の合意を得た上で賛成した。
一方で同党幹部から慎重な声も上がる。斎藤アレックス政調会長は、野党の立場から政策協議を行う方が有利だとする意見もある上、選挙区調整も困難なため、「相当ハードルが高い」と述べた。
小泉氏のライドシェア解禁など規制改革を訴える姿勢は、維新と親和性がある。8月末には吉村代表と小泉氏は共に大阪万博を視察した。遠藤敬国対委員長は小泉氏を支援する菅義偉副総裁や斎藤健前経済産業相と24、25日にそれぞれ面会したと共同通信が報じている。
副首都構想を巡っては、高市氏は公約に「首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築する」と明記した。林氏も藤田氏との対談では議論してきたい意向を示している。
他の政策
- 医療費の総額を年間で4兆円以上削減
- ライドシェアの完全解禁、農業の成長産業化などの規制改革
- 食料品の消費税率を2年間0%に引き下げ-税収の上振れで財源確保
国民民主党(衆院27議席、参院25議席)

玉木雄一郎代表は、自民、公明、国民民主3党の幹事長が昨年12月に合意したガソリン税の暫定税率の廃止と所得税が発生する「年収の壁」の引き上げをまず求める方針で、「いきなり連立はあり得ない」としている。
候補者はガソリン暫定税率の廃止と所得税改革に前向きな姿勢を示す。小泉氏は「インフレ対応型経済」を掲げ、公約には、物価や賃金の上昇に合わせて所得税の基礎控除などを調整する仕組みの導入を明記した。国民は年収の壁を178万円まで引き上げる理由として最低賃金の上昇を挙げていた。
高市氏は同党が主張する178万円までの引き上げにも肯定的な姿勢だ。国民が参院選で掲げた車の取得時に課される自動車税などの環境性能割の時限的な廃止についても、愛知の演説会で言及した。高市氏が主張する責任ある積極財政は、国民が掲げる高圧経済と共通する面がある。
また、実質賃金が持続的にプラスになるまで消費税率を一律5%に引き下げることも主張している。約10兆円の税収減となるが、税収上振れ分や外国為替資金特別会計剰余金の活用に加え、短期の対応としては国債発行も選択肢としていた。
他の政策
- 投資額以上の償却を認め、成長分野への投資を促進する
- 「教育国債」の発行で教育予算10兆円に
立憲民主党(衆院148議席、参院42議席)

基本政策の相違から自公が立民と連立を組む可能性は低いが、法案や予算案成立に向けた協力を行う可能性はある。石破茂首相の辞任表明後も、給付付き税額控除の制度設計に向けた協議を3党で行っている。
以前から同制度の導入を主張する高市氏は今回の公約でも掲げている一方、制度設計には3年程度かかると指摘。世帯の状況に応じて低・中所得者を支援する「日本版ユニバーサル・クレジット」の創設を掲げる林氏は、税・社会保障一体改革の協議の中で取り上げたいと話した。小泉氏は3党協議を引き継ぐ考えを示している。
参院選では物価高対策として、1人当たり2万円の給付と、26年4月から最大2年間、食料品の消費税率を8%から0%に引き下げることを掲げた。
最大野党である立民は、他の野党と連携して野田氏の首相指名を目指す可能性もあるが、現状の分裂状況を考慮すると実現性は低い。
他の政策
- 食料と農地を守る直接支払制度を創設
- 企業・団体献金の禁止
参政党(衆院3議席、参院15議席)

過半数確保には議席数が不足している上、神谷宗幣代表は党の体制構築を優先するため連立には「参加したくない」と明言している。一方で、5人の候補者のうち高市氏の外国人受け入れを論点化する姿勢が同党に「一番近い」と述べた。高市氏も一致できる政策では協力したい考えを示した。
同党は外国人問題を中心に自民党の保守層と支持基盤が重なっており、参院選や総裁選の議論に影響を与えてきた。
他の政策
- 税・社会保険料の負担を所得の35%に上限設定
- 外国人の土地所有制限を含む外国人政策の厳格化
--取材協力:横山恵利香.
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