米連邦準備理事会(FRB)のマイラン理事は、大幅な利下げの必要性があると中銀当局者らを説得できるとまだ期待しているかもしれない。だが、ウォール街の多くを納得させるには至っていない。

マイラン氏は初めての主要な政策スピーチで、トランプ政権の通商、移民、税制、規制に関する政策が、インフレ抑制に必要な金利水準を大幅に引き下げたと主張。これは現在の米政策金利が高過ぎることを示唆しており、政策当局がこの根本的な変化を認識するのが遅れていると訴えた。

JPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は顧客向けリポートで「彼の主張の一部は疑わしく、他は不完全で、説得力のあるものはほとんどない」と記した。

マイランFRB理事のインタビュー

マイラン氏は、9月16、17両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の直前に理事として承認された。FRBは同会合で今年初めて政策金利を0.25ポイント引き下げたが、マイラン氏は0.5ポイントの大幅利下げを主張し、反対票を投じた。

22日にニューヨーク経済クラブで行った講演では、中立金利の水準に一気に引き下げるための大幅な利下げを訴え、今後の会合で自説を貫くために必要なら引き続き反対票を投じる構えを見せた。

異端

マイラン氏は講演直後から米金融当局内で異端の立場を鮮明にした。当局者らは今年、インフレが依然として目標の2%を大きく上回る中で利下げに慎重だったが、労働市場の弱さを背景に今月ようやく行動に踏み切った。

政策会合後も、多くの当局者は追加利下げへの支持に消極的で、急速かつ大幅な利下げにはなおさら否定的だ。セントルイス連銀のムサレム総裁はインフレ率の高止まりを踏まえると追加緩和の「余地は限定的だ」と述べ、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁も追加利下げを支持しながらも「時期は不透明」としている。

こうした慎重姿勢は、24日に発表された4-6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)確報値がほぼ2年ぶりの高い伸びだったことで裏付けられた。同日発表の8月の耐久財受注などの統計も7-9月(第3四半期)の経済成長を暗示する内容だった。25日には、新規失業保険申請件数が7月中旬以来の低水準となったことも判明した。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のトム・オーリック氏とジェイミー・ラッシュ氏は「インフレ率が4年以上にわたり目標を上回り、今後も高止まりと比較的低めの失業率が見込まれる中で、極端な金融緩和を正当化する責任はマイラン氏にある」と指摘した。

それでもマイラン氏は主張を重ね、25日のテレビインタビューでは、当局が迅速に動かないと経済を損なう恐れがあると警告。「ごく短期間に連続で」0.5ポイントの利下げを実施し中立金利に引き下げる構想を示した。

26日の統計では8月の個人消費が堅調に伸び、FRBが重視する基調的なインフレ率は前年同月比2.9%と、目標を1ポイント近く上回ったままだった。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は26日の統計公表後のリポートで「マイラン氏が主張する即時かつ大幅な利下げを支持する材料は、この統計には全くない」と述べた。

ただ、全てのエコノミストがマイラン氏の見解を完全に退けているわけではない。ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、中立金利はFRBが想定するよりやや低いと見ており、政策は確かに引き締め的だと認める。だが、マイラン氏が主張するほど低いとは考えていない。

原題:‘Questionable, Incomplete’: Wall Street Rejects Miran’s Fed Call(抜粋)

--取材協力:Jonnelle Marte.

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