(ブルームバーグ):トランプ米政権が、TikTokの米国事業の評価額を140億ドル(約2兆1000億円)とした。これまでの約400億ドル近くとの予測を大きく下回っており、世界的なソーシャルメディア企業というより、古風なエネルギー企業や食品企業のような評価額となっている。売却先には低い評価額は歓迎されそうだが、親会社である中国の字節跳動(バイトダンス)や既存の投資家には、滑稽または侮辱とすら映る可能性がある。
見積額は、バンス副大統領が24日に提示した。トランプ大統領は、バイトダンスから米国事業を米国投資家へ売却させる計画を推し進めている。
バンス氏は、支払額は「最終的には」買い手が決めるとしている。買い手としては、オラクルやシルバーレイク・マネジメントなどが想定されている。
アルファ・ビンワニ・キャピタルの創業者アシュウィン・ビンワニ氏は、「今世紀で最も過小評価されたテック企業買収となる可能性がある。主要な財務指標や同業他社との比較から見ても、この価格は現実とかけ離れている」と語った。同氏の推定では、この提示額はTikTokの実際の価値の3分の1程度という。
TikTokの動画共有プラットフォームは、1日あたりの平均利用時間で、米国で最も人気のあるソーシャルメディアの一つだ。その影響力は、インスタグラムやYouTubeが競合する短編動画サービスを拡大したことからも見て取れる。
TikTokの価値評価は、同社の貴重なコンテンツアルゴリズムの複雑さから、常に難題とされてきた。最も収益性の高く、1億7000万人のアクティブユーザーを抱える米国事業の収益は、最も保守的な見積もりでも年間100億ドルを超えるとされる。
140億ドルという評価額の場合、TikTok米国事業の売上高倍率(PSR)は約1.4倍となり、成熟した低成長企業のエクソンモービルやゼネラルミルズと同水準になる。ちなみに、インスタグラムを運営するメタ・プラットフォームズは約10倍、YouTubeの親会社アルファベットは8倍だ。
ユニオン・バンケール・プリベのアジア・テクノロジー部門シニア株式アドバイザー、ベイサーン・リン氏は「提示された評価額は、白昼強盗のように見える」と切り捨てた。

TikTok米国事業の買収手続きは、120日以内に完了しなければならない。その後、同事業は新しい合弁会社として分離され、バイトダンスの持ち株比率は、米国の国家安全保障上の懸念に対応するため、20%未満に引き下げられることになる。トランプ氏は、中国の習近平国家主席がこの取引について承認したとしているが、中国政府は承認したかどうかを公に表明していない。
原題:TikTok’s $14 Billion Price Tag in Trump Deal Stuns Investors (1)(抜粋)
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