(ブルームバーグ):OpenAIのような人工知能(AI)企業は、データセンターに数千億ドル規模の投資計画を次々と打ち出してきたが、その巨額の資金をどう捻出するのかは示していない。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは、資金不足が従来の想定を大きく上回る可能性があると試算している。
ベインが23日に公表した年次報告書「グローバル・テクノロジー・レポート」によると、AI企業は需要拡大に伴うコンピューティング能力の確保に向け、2030年までに年間で計2兆ドル(約300兆円)の収入が必要となる。しかし、ChatGPTといったサービスの収益化は遅れており、データセンターや関連インフラへの支出に追いつかず、年間で8000億ドルの収入不足に陥る可能性がある。
この報告書は、AI業界の企業価値やビジネスモデルに対する懸念を一層強めかねない。OpenAIのChatGPTやグーグルの「Gemini(ジェミニ)」の普及が進み、各国の企業がAI開発にしのぎを削るなか、コンピューティング能力とエネルギー需要は急増している。一方で、AIがもたらすコスト削減効果や、企業が新たに収益を生み出す力は、そのスピードに追いついていない。
ベインのグローバル・テクノロジー部門責任者デービッド・クロフォード氏は「現在のスケーリング則が維持されれば、AIは世界的にサプライチェーンへの負担を強めていく」と指摘した。
ブルームバーグのこれまでの報道によれば、OpenAIは年間で数十億ドルの損失を計上しつつも利益より成長を優先しており、2029年にはキャッシュフローの黒字化を見込んでいる。ベインは、AI企業が2030年まで利益を上げられない状況が続いた場合の影響については触れていない。
ブルームバーグ・インテリジェンスによると、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズなど大手ハイテク企業は、2030年代初頭までにAI関連の年間支出を5000億ドル余りに拡大すると予測されている。OpenAIや中国のディープシークによる新モデル投入が需要を押し上げ、業界全体の投資を加速させている。
さらにベインは、世界のAI向けコンピューティング需要が30年までに200ギガワットに達し、その半分を米国が占めると予測。技術やアルゴリズムの飛躍的進歩が負担を軽減する可能性はあるものの、サプライチェーンの制約や電力供給不足が成長を阻む恐れがあるとした。
主要AI企業はコンピューティング能力の拡充に加え、製品開発にも巨額を投じている。複数の工程を限られた指示でこなす自律型AIエージェントが注目分野の一つだ。ベインは、今後3-5年で企業が技術投資の最大10%を、こうしたエージェントプラットフォームを含む中核的なAI能力の構築に充てると見込んでいる。
原題:An $800 Billion Revenue Shortfall Threatens AI Future, Bain Says
(抜粋)
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