英国の財政赤字は8月に予想以上に膨らみ、今秋の予算編成に取り組むリーブス財務相はいっそう厳しい選択を迫られそうだ。

英政府統計局(ONS)が19日発表した8月の財政赤字は180億ポンド(約3兆6000億円)に上った。予算責任局(OBR)が予想していた125億ポンドを大きく上回り、8月としては過去5年間で最大となった。

今会計年度に入ってから5カ月の赤字額は838億ポンドとなり、OBR予測を114億ポンド超過した。これは1993年の統計開始以来、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)があった2020年に次いで2番目の大きさ。前年同期は676億ポンドだった。

 

英国の今年の財政は支出増加を税収増が補い、順調に進んでいるかのように見えたが、8月の数字は大きな後退だ。リーブス氏が自ら設定した財政規則に対して確保していた99億ポンドというわずかな財政余地も一段と縮小する恐れがあり、英国の危うい財政状況を浮き彫りにした。

この財政悪化の発表を受け、ポンドと英国債は下落。英10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.71%、30年債利回りは4bp上昇して5.55%となった。ポンドは一時0.5%下落して1.3483ドルと、9月8日以来の安値をつけた。

リーブス氏は11月26日に発表する予算の編成で既に困難な作業を強いられており、借り入れコスト上昇を相殺するための大規模な増税、一部政策の撤回を余儀なくされる見通しだ。この予算発表時には、OBRの経済成長予測引き下げも明らかにされる見込み。

ブルームバーグ・エコノミクスは、3月の春季財政報告以降に生じた財政赤字を穴埋めするには350億ポンドが必要と試算している。

ONSによれば、今年の財政悪化は税収増を上回る公的サービス、社会保障給付や国債の利払い費用の増加が原因となった。

原題:UK Budget Deficit Overshoots Forecast in New Blow to Reeves (2)(抜粋)

--取材協力:Mark Evans、市倉はるみ、Joel Rinneby、David Goodman、James Hirai.

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