(ブルームバーグ):日本銀行が発表した上場投資信託(ETF)の売却が株式需給に与える影響は限定的との見方が出ている。
日銀は19日の金融政策決定会合で、保有するETFと不動産投資信託(J-REIT)の市場への売却を全員一致で決めた。ETFは年間の売却が簿価で3300億円程度、時価で6200億円程度のペースで行う。発表を受けて日経平均株価は一時1.8%安まで急落、ウエートが大きいファーストリテイリング株は6.2%安まで下げた。
市場関係者の見方は以下の通り。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストと乾真之エコノミスト
公表された金額だとETFを売却し終えるのに113年、J-REITは131年かかる計算で、市場への影響を最小限にする緩慢なペースでの売却と評価できる。景気後退局面では株価が大きく下落する売却は停止される可能性が高いことから、実際には売却完了までもっと長い時間がかかるかもしれない。
りそなホールディングスの武居大暉ストラテジスト
ETF売却は日銀の保有比率が高い大型ハイテク株を中心に売り圧力が広がるため、センチメントの悪化につながった。加えて審議委員のうち2人が金利据え置きに反対票を投じており、利上げ観測がにわかに台頭してきたことも相場の重しになった。ただ発表された売却ペースではすべての売却に100年以上かかる計算になり、市場への影響はほとんどないだろう。
アイザワ証券の河西幸弘シニアストラテジスト
ETF売却はサプライズで利益確定のきっかけになった。ただ、年3300億円の売却だと需給へのインパクトはほぼないだろう。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト
株式市場はネガティブに反応しているが、早晩落ち着きを取り戻すだろう。売却額は限定的で、これまでの市場参加者の日本株に対する想定を大きく変えるものではない。ETF売却では日経平均銘柄の売却比率が高く、日経平均のウエートが大きい値がさ株には一時的にネガティブな反応は出るだろう。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏
ETFとJ-REITの縮小計画は政策正常化に向けた次の(段階的な)ステップを意味する。中期的には日本株に弱気材料となる一方、銀行株には追い風となる。委員会内でタカ派の声が強まっており、植田総裁の会見でガイダンスに反映されれば円高要因となる可能性がある。
DBS銀行のストラテジスト、チャン・ウェイ・リアン氏
日銀が資産買い入れで保有してきたETFやJ-REITの売却によってバランスシート縮小を加速させる動きは、政策正常化へのさらなる一歩である。日銀が追加利上げに向けた地ならしをしていることを示しており、円は堅調に推移するだろう。
--取材協力:堤健太郎、アリス・フレンチ、Winnie Hsu、ジョン・チェン.
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