(ブルームバーグ):高市早苗前経済安全保障相は19日午後、自民党総裁選(22日告示、10月4日投開票)への立候補表明の記者会見で、「責任ある積極財政」を進めることで「強い経済」の構築を目指す考えを示した。
高市氏は記者会見で、経済財政運営について「今や世界の潮流は行き過ぎた緊縮財政ではなく責任ある積極財政」だと指摘。「大胆な危機管理投資と成長投資で、暮らしの安全、安心の確保、そして強い経済、この両方を実現する」との決意を示した。
公約となる「主要政策」では、所得税などの減税と現金給付を組み合わせて中低所得者を支援する「給付付き税額控除」の制度設計に着手、ガソリン暫定税率の廃止を急ぐことや、所得税の「年収の壁」の引き上げなどを明記した。参院選前に主張した食料品を対象にした消費税減税は盛り込まなかった。
海外からの投資を厳格に審査する「対日外国投資委員会」の創設も明記した。外国人政策に関しては司令塔機能を強化し、不法滞在者対策や土地取得規制見直しなど検討する考えも明らかにした。
積極財政派として知られる高市氏は会見で成長重視の姿勢を鮮明にさせた。外国人政策の強化は保守層に配慮した。給付付き税額控除に関しては自民、公明、立憲民主の3党は協議体を設置することで合意しており、石破茂政権の対応を引き継ぐ形となる。同制度実現に関し、高市氏は数年かかる取り組みになるとの見通しを示した。
消費減税は掲げず
高市氏は参院選前の今年5月、食料品への消費税率(8%)を0%に引き下げるべきだとの考えを示していた。今回、減税を掲げなかった理由について、レジの対応などで実現には時間がかかるとして「今の物価高対策として即効性はない」と説明した。現金給付に関しては参院選大敗で国民の支持は得られなかったと指摘した。
日本銀行の金融政策決定直後となった会見で、金融政策に関して言及するかどうかも市場は注目していたが、発言はなかった。日銀は19日の会合で政策金利の維持を決めたが、利上げを主張した2人の審議委員が反対した。
総裁選には高市氏に加え、茂木敏充前幹事長、小林鷹之元経済安全保障担当相、小泉進次郎農相、林芳正官房長官の5人が立候補を表明している。石破首相と昨年の総裁選で決選投票を争った高市氏と3位につけた小泉氏を軸に展開する構図だ。小泉氏も20日午前10時30分から出馬会見を行う。
JNNの報道によると、小泉氏は20日発表する公約に「2030年度までに平均賃金100万円増を目指す」ことなどを盛り込む。物価高対策では「ガソリン暫定税率の速やかな廃止」や「所得税を見直し、物価や賃金の上昇に対応し基礎控除等を調整する仕組みを導入」すると打ち出すという。
自公立党首会談
給付付き税額控除は立民が参院選の公約で掲げていた。19日昼には自民総裁の石破首相、立民の野田佳彦代表、公明党の斉藤鉄夫代表が党首会談を行い、同制度の扱いなどについて協議体を設定し、議論を進めることで合意した。
党首会談に先立ち午前に開かれた衆院予算委員会では、立民の本庄知史政調会長が石破政権下での党首同士の議論について「引き継ぐべきだ」と指摘した。小泉農相は公党間の約束に「誠実に向き合って履行に向けて努力するというのは当然のことだ」と述べた。
共同通信が11、12両日に行った世論調査では、次の自民総裁にふさわしい人として高市氏を挙げた回答が28.0%と最も多く、小泉氏が22.5%、林氏が11.4%と続いた。石破内閣の支持率は34.5%で6、7両日実施の前回を1.8ポイント上回った。
高市氏の他の発言
- 私は穏健保守や中道保守の位置付け
- 国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことに反対
- 首都機能のバックアップ体制を構築する
- 自公連立の上に基本政策一致する野党とできれば連立組む
- 決め打ちせず積み上げて対応していく-今後の防衛費増
- 中国は大切な隣国、外交関係は良好にしていく
(高市氏の記者会見での発言を追加し、更新しました)
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