華為技術(ファーウェイ)からアリババグループまで、中国の大手テクノロジー企業が今月、最新の人工知能(AI)向け半導体技術の進展を相次いでアピールしている。各企業の積極的な姿勢が投資家の注目を集め、計2400億ドル(約35兆5400億円)規模の株価上昇を引き起こしている。

ファーウェイは18日、半導体チップ開発の3カ年計画を初めて公表し、大規模クラスターや、当局の規制対象となっているエヌビディア製アクセラレーターに取って代わる、大幅な高速化を実現したAIチップを発表した。17日には、電子商取引大手アリババグループが、中国国有通信会社、中国聯通(チャイナ・ユニコム)とAIアクセラレーターの供給契約を締結したと中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた。

この1カ月、百度(バイドゥ)やカンブリコン・テクノロジーズでも、同様の進展が相次いで明らかになった。米国の制裁に直面する中国が、長年取り組んできた国産チップ開発において、2025年は転換点となりつつあるようだ。

期待

こうした動きが長期的に続くのか、また、中国勢が設計した半導体チップが量産可能かは不透明だ。エヌビディアの市場支配力は圧倒的で、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やインテルでさえ、AI分野では二流扱いだ。一方、ハイエンド半導体製造装置の分野は、ASMLホールディングのような企業が支配している。台湾積体電路製造(TSMC)は世界で最も高度なプロセッサーの大半を製造しているが、米国政府の制裁対象となっている中国企業との取引が禁止されている。

それでも投資家は、このところの動きが、将来的に実製品へと結びつくと見込んでいる。中国のハイテク株の指標であるハンセンテック指数は17日、2021年以来の高値で取引を終えた。上昇傾向は8月下旬に始まり、けん引役のアリババ株は約37%急騰した。同指数の構成銘柄30社の時価総額は、計2400億ドル増加している。

 
 

CAインドスエズ・ウェルス・マネジメントのアジア担当チーフストラテジスト、フランシス・タン氏は「AI分野だけでなく、現在中国が優位にある全ての革新的産業で、中国ではDeepSeek(ディープシーク)のような瞬間がさらに訪れるだろう」と述べた。

米政府は長年、米国の技術が中国の経済的・軍事的野心に利用されることを恐れ、中国を封じ込めようとしてきた。これに対し中国政府は、国内のテクノロジー企業に対し、バリューチェーンの上流へ進むよう促してきた。

中国のチップは、概してエヌビディアやAMDのものより劣る。だが近年、多くの企業が電力と性能の限界を回避する革新的な解決策を見いだしている。ファーウェイは18日、最大100万個のチップをグループ化・クラスタリングする技術について説明し、理論上は後れを挽回できると主張した。

国も後押し 

中国政府は、国内企業の取り組みを支援している。主要な規制当局は今夏、中国企業に対し、エヌビディアの半導体「H20」の使用中止を促し始めた。関係者によると、中国インターネット規制当局は、アリババグループなどテック大手に対し、 エヌビディアのワークステーション向け半導体で、AIアプリケーションにも転用可能な「RTX Pro 6000D」の発注を停止するよう指示した。

今後の大きな鍵を握るのは、中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国の主要メーカーが、歩留まり率を高めることで、効率的にチップを量産できるかどうかだ。今週、英紙フィナンシャル・タイムズは、SMICが大量生産実現の一助となる、国産製造装置の試験を行っていると報じた。

インドスエズ・ウェルス・マネジメントのタン氏は「ディープシークのような成功事例が増える可能性と、中国ハイテク部門の株価がなお低い水準にあることを考慮すると、今後さらに多くの投資機会が生まれるだろう」と述べた。

原題:China’s Showcase of AI Chip Prowess Triggers $240 Billion Rally(抜粋)

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