米投資会社のタコニック・キャピタル・アドバイザーズは18億ドル(約2700億円)規模の旗艦マルチストラテジーファンドであるオポチュニティーファンドを閉鎖する。同社は欧州クレジット戦略部門を分離し、経営陣の刷新にも着手した。投資家に宛てた12日付の書簡によれば、45億ドルの運用資産を大幅に削減し、北米クレジットと合併・買収(M&A)裁定という強みに経営資源を集中させる。

共同創業者のフランク・ブローゼンズ氏は「当社の強み2分野に集中するということは、商業不動産と欧州クレジットといった他の戦略へのエクスポージャーを減らすことを意味する」と書簡で述べた。この撤退に想定より時間がかかり、ファンドの成績に悪影響を与えたという。書簡はブルームバーグが確認した。タコニックの広報担当者はコメントを控えた。

タコニックは1999年にブローゼンズ氏と故ケン・ブローディー氏が創業。不振だった商業用不動産事業をここ数カ月で閉鎖し、同部門のファンドをアクソニック・キャピタルに売却した。2023年にはクリストファー・デロング最高投資責任者(CIO)が退職し、ネイト・ケンプナー氏がブローゼンズ氏と共同CIOを務めている。

タコニックが注目を集めたのは、経営不振に悩む不動産会社アドラー・グループへの投資。アドラーは空売り投資会社バイスロイ・リサーチに詐欺を告発され、資産売却や債務返済に苦戦した末、タコニックを含む債権団の管理下に置かれた。

別の投資家向け文書によると、タコニックのオポチュニティーファンドは10年以上も9%を上回るリターンを出したことがない。2004年の設定以来、リターンは年率で5.8%。ピボタルパス・イベント・ドリブン指数はほぼ同期間に、平均で年間7.8%のリターンを残している。

タコニックの旗艦ファンド、年間リターン推移

一方でジョン・ジャックマン氏が率いるクレジット戦略は8月までで年率約19.6%、マーガレット・ジョーンズ氏の合併裁定ファンドは年初来で9%と、いずれも比較的好調。タコニックは3億6000万ドルを運用する合併裁定ファンドを継続し、新たに常設型のクレジット・オポチュニティー・ファンドを設定する。

ブローゼンズ氏は共同CIOを退いて会長となり、ケンプナー氏が単独CIO兼任最高経営責任者(CEO)に就任する。社内文書によると、ロンドンに本拠を置く欧州クレジットチームは1月に分社化され、ドロマイト・キャピタルとして独立する。ドロマイトのポートフォリオマネジャーらはすでに、プライベート(未公開企業)クレジット戦略の当初資金を確保。タコニックで運用していた11億ドルも引き継ぐという。

オポチュニティーファンドの投資家は10月1日から、既存の合併裁定ファンドか新設のクレジットファンド、もしくはその両方に資金を移すことが可能になる。クレジットファンドに移行すれば従業員と同じ条件で、一部の収益配分も受けられる。経営陣はオポチュニティーファンドから自己資金2億ドルを新クレジットファンドに移す。全投資家が解約すれば、タコニックに残る資産は約18億ドルになる。

原題:Taconic Shuttering Flagship Hedge Fund in Broad Shakeup (1)(抜粋)

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