12日の日本市場では株式が3日続伸し、日経平均株価は連日で最高値を更新した。米国で消費者物価指数(CPI)や雇用関連指標を受けて利下げ観測が維持され、投資家心理を支えた。債券は中長期債が下落(利回りは上昇)、円は弱含みで推移した。

注目を集めた米CPIはインフレ率が依然として米連邦公開市場委員会(FOMC)の2%目標を上回っているものの、制御不能な水準には至っていないことを示した。同時に発表された米新規失業保険申請件数はほぼ4年ぶりの高水準となり、労働市場の急速な減速に対応する形でFOMCが来週利下げに踏み切るとの見方を一段と強めた。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、ハイテク株の選好を中心に株式市場では「センチメントが強い」と指摘する。その上で、来週のFOMCに向けて米利下げの織り込みが進む中、弱い米経済指標に対する市場の見方が利下げ期待から「景気悪化のサイン」に変わる可能性がある点には注意が必要と話した。

株式

株式相場は、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体関連株が上昇をけん引。銀行などの金融や商社、不動産や建設といった内需関連銘柄も堅調だった。

SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、アドバンテストは高値追いという感じだが、その他の半導体関連も「大きく下げた後なので、そこが戻るだけでも日経平均にはプラスに効く」と話した。

TOPIX業種別指数では精密機器指数が上昇率トップ。11日の米国市場でテクノロジー株が上昇し、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が最高値を更新したことを受け、国内でも人工知能(AI)関連株に買いが先行した。

債券

債券相場は中長期債が下落。日本銀行の年内の利上げを意識した売りが優勢だった。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、自民党次期総裁として本命視されている小泉進次郎農相が出馬の意向を固めたとの報道を受けて、日銀の年内利上げ期待が復活していると指摘。長期金利は1.6%を目指すと予想する。

一方、超長期債は上昇した。木村氏によると、小泉氏が出馬すれば、高市早苗前経済安全保障担当相が自民党総裁になり財政拡張が行われる可能性が低下するので、見直し買いが入ったという。

ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、日銀は10月に利上げに踏み切ると予想。同月1日に公表される企業短期経済観測調査(短観)や同3日の植田和男総裁の講演などを経て、徐々に利上げに向けた機運が高まり、長期金利に上昇圧力が加わるとみている。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は1ドル=147円台半ばに小幅下落。日米の財務相が為替介入は過度な変動に対処するためのものに限定するとの共同声明を発出したことを円売り材料と見る向きもあった。

SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、共同声明で介入に支障が出るとの見方で円が売られていると話した。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは「日本の為替政策に対する米国政府の関心の高さを感じさせる」と指摘。「日本の介入や金融政策を縛る内容ではないが、あえてペーパーにして声明を出すのは異例で、結構圧力をかけている印象」との見方を示した。

市場の関心は来週のFOMCに移っている。ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、CPIが利下げを妨げる内容ではないとの見方から、海外市場ではドル安・円高に振れたが、米連邦準備制度理事会(FRB)は来週の会合で利下げしても「期待インフレが高く、今後の金融政策スタンスをはっきり示さないだろう」と話した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:横山桃花.

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