10日の日本市場では株式が反発。日経平均株価は終値での過去最高値を約3週間ぶりに更新した。利下げ期待で米国株が上昇した流れを引き継いだ。債券は中期債が下落(金利は上昇)、円は1ドル=147円台前半から半ばで推移した。

米国では雇用統計の年次ベンチマーク(基準)改定の推計値が大幅な下方修正となり、利下げ期待が強まっている。オラクルが第1四半期の大幅な受注増を明らかにし、アップルがスマートフォンの新モデル「iPhone 17」シリーズを発表したことも国内のハイテク関連株に追い風となった。

オルタス・アドバイザーズのアンドリュー・ジャクソン日本株戦略責任者は、オラクル株の上昇とアップルの発表が「日本の半導体製造装置メーカーや電線関連銘柄に非常に強気な地合いを作り出している」と述べた。

電機や情報・通信、非鉄金属などが上昇した。日本銀行は国内政治情勢が混乱する中でも年内利上げの可能性を排除しないとの報道を受け、銀行株も買われた。半面、自動車や医薬品、機械などは下落した。

【株式】

ソフトバンクグループがTOPIXの上昇に最も寄与した。ほかにもアドバンテストやフジクラ、イビデンなど人工知能(AI)関連株には幅広く買いが集まった。

日本株を巡っては国内政策への期待も根強い。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは「仮に高市早苗氏以外が自民党総裁選に勝利しても、少数与党なのである程度は財政拡張的な施策をとるのではないか」とし、期待が大きく剝落するリスクは今のところ小さいとみている。

エリオット・マネジメントによる株取得が明らかになった関西電力は5.3%高と4月以来の上昇率だった。報道によればエリオットは不動産を含む本業以外の部分に注目しており、配当金を現在の1株当たり60円から100円以上へ引き上げるよう求めたという。

三菱UFJeスマート証券の山田勉マーケットアナリストはエリオットによる関西電力株の保有が「電力業界の株価の起爆剤になる可能性がある」と指摘。中部電力は1.2%、九州電力は1.3%上げた。

【債券】

債券相場は中期債が下落。米長期金利の上昇に加え、日銀が年内利上げの可能性を排除しないとの報道が重しになった。超長期債は前日からの買い戻しが続いて上昇した。この日行われた5年利付国債入札は無難な結果だったとの声が出ている。

5年債入札は、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が3.7倍と過去12カ月の平均(3.69倍)並みで、前回の2.96倍から上昇した。最低落札価格は99円88銭と市場予想と一致。大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は3銭と前回と同じだった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、最低落札価格が予想通りだったほか、応札倍率も前回を上回り、無難な結果だったと話す。日銀が年内の利上げは排除しないとの報道を受けて「午前中に利回りが上昇したことが奏功し、需要が集まった」と指摘する。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「超長期債は堅調だったが、石破茂首相の退陣による財政拡張懸念の高まりが重しになり続ける」とみる。一方で、「誰が自民党の新総裁になっても石破政権下より利上げしにくくなるため、中期金利の上昇は抑制され、利回り曲線はスティープ(傾斜)化が続く」と予想した。

新発国債利回り(午後3時時点)

【為替】

東京外国為替市場で円相場は1ドル=147円台前半から半ばで推移。米物価指標の発表を前に、明確な方向感は出なかった。

ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、ドル・円はいったん様子見になっていると指摘。米国の9月利下げが既定路線になる中、10日の生産者物価指数(PPI)や11日の消費者物価指数(CPI)が強ければ、「年2回以上の部分が剝落する余地が出てくるので、ドル高圧力になりやすい」とみている。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:古澤百花、アリス・フレンチ.

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