(ブルームバーグ):米ニューヨーク市で不動産開発会社が建設する集合住宅物件の住戸数が99戸という傾向が顕著になっている。それ以上でも以下でもなく、ちょうど99戸だ。
ロビー団体のニューヨーク不動産協会(REBNY)が分析した市のデータによると、99戸物件の建設許可申請はここ4四半期で28件と、直近16年間の合計数の2倍を超えた。
業界関係者にとって、理由は明白だ。不動産開発で100戸以上の集合住宅については、労働者の賃金水準引き上げを義務付ける新たな税制が導入されたためだ。
ニューヨーク州議会は昨年、低価格住宅を一定数含める不動産開発に税優遇措置を認めるプログラム「485-x」を可決。2022年に期限切れとなった「421-a」に代わるこの制度では、住戸数が100戸以上の物件を手がける開発会社は労働者に最低でも時給40ドル(約5900円)の支払いが義務付けられる。
一方、99戸以下の建物では、労働者に支払う最低時給は市の最低賃金(16.50ドル)にとどまる。ニューヨーク州労働局によると、建設業で働き始めたばかりの労働者の平均時給は一般的に18.30ドルで、熟練労働者は最大50.38ドルとなっている。
重い要件
新たな税制プログラム導入の影響を如実に示しているのが、デベロッパーの計画変更だ。
MAGパートナーズの最高経営責任者(CEO)を務めるメアリーアン・ギルマーティン氏は以前、ニューヨーク市内で400戸規模の賃貸住宅用高層ビル2棟の建設を構想していたが、現在はより小規模な建物を最大6棟建設する計画を検討している。
新たな計画では、供給される住戸数が少なくなるほか、工期が長期化し、1戸当たりのコストも増えるが、それでもより採算が合う選択肢だという。
これは、市内の住宅供給を大幅に拡大する目的で導入された税優遇策の意図せぬ結果だ。家賃高騰で生活が一段と厳しくなっている状況で、REBNYや多くのデベロッパーは485-xに妨げられ、旧制度の下でなら可能だったはずの住宅供給拡大を実現できなくなると主張している。
ギルマーティン氏は賃金要件について、「極めて重い負担だ。住宅建設は減り、スピードも落ち、財政的にも成り立たなくなる。率直に言って、住宅危機に対処する能力が低下するだけだ」と語った。
デベロッパーと協力する法律事務所ローゼンバーグ&エスティスのダニエル・バーンスタイン弁護士は、「手頃な価格の住宅建設がより少数かつ遅いペースとなる。住宅供給は増えるものの、賃金要件のため、大規模開発のような水準には至らないだろう」との見方を示している。

原題:NYC Housing Market Draws Rash of 99-Unit Apartment Buildings(抜粋)
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