ゴールドマン・サックス・グループとバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは、安全資産としての円の魅力が政治的不確実性の高まりによって損なわれつつあるとして、円よりもスイス・フランを推奨している。

BofA日本部門の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは8日のリポートで、円の財政リスクを取引に反映させるにはCHF・JPYのロングが最も分かりやすいかもしれないと指摘。スイスの財政面の健全性と、従来の安全通貨であるドルおよび円のリスクプレミアム上昇を挙げた。

マイケル・ケーヒル氏らゴールドマンのストラテジストも同様の見解を示し「日本で新たな政治的不確実性が生じていることは、スイス・フランにとって、またユーロにとっても幾分、支援材料となるだろう」と分析。米経済の先行き懸念や、米連邦準備制度理事会(FRB)による段階的な利下げが、両通貨にとって追い風になるとの見方を示した。

 

過去3カ月に主要10通貨の中で最も大きく下落した円は、石破茂首相の退陣表明を受けてさらなる下押し圧力にさらされている。後任候補には財政出動に積極的な姿勢を示す人物もおり、市場では財政規律の緩みに対する懸念が高まっている。

中央銀行の政策方針の違いもフランの対円での上昇を後押ししており、この通貨ペアは今週、過去最高値を更新した。

日本銀行の政策正常化は政局不安によって先行きが不透明となる一方、スイス国立銀行(中銀)はインフレ加速を背景に政策金利の下限に達したとみられている。

フランは近年、スイスの堅調なマクロ経済指標を背景に一部の投資家から選好されてきた。日本の実質利回りがマイナス圏にあるのに対し、スイスは緩やかながらもプラス圏を維持している。

また、日本は経常収支で大きな黒字を計上しているものの、その多くは海外に再投資されることの多い投資収益によるものだ。これに対し、貿易収支は2011年以降、おおむね赤字が続いている。一方、スイスの貿易黒字は拡大傾向にある。

国際通貨基金(IMF)のデータを基にしたブルームバーグの分析によると、世界の外貨準備に占めるスイス・フランのシェアは1-3月期に0.18%で、円は5.15%となっている。

原題:Goldman, BofA Favor Swiss Franc Over Yen as Haven Bet (Correct)(抜粋)

(最終から2段落目を追加します。更新前のバージョンは外貨準備に占める比率を訂正済みです)

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