5日に発表された8月の米雇用統計が低調だったことを受け、米労働市場が悪化局面に差しかかっているとの懸念が裏付けられ、金融市場では年内の米利下げ観測が強まった。

投資家は現在、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での0.25ポイント利下げを完全に織り込んでいる。先物市場によれば、年内に合計3回の利下げを見込む動きも強まっている。一部の米連邦準備制度理事会(FRB)ウォッチャーは、低調な雇用統計を受けてFOMCが9月会合で通常より大幅な0.5ポイントの利下げを検討することもあり得ると指摘。ただ、来週発表されるインフレ指標がそうした見方を抑える可能性もあるとしている。

KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「0.25ポイントの利下げについては疑いの余地はない」と指摘。「労働市場の亀裂が広がっていることを裏付けており、それは問題だ」と述べた。

改修工事中のFRB本部(ワシントン、2025年7月24日)

8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比2万2000人増にとどまり、失業率は4.3%に上昇した。また過去データの修正により、6月の雇用者数は2020年12月以来の減少となった。これを受け、インフレがFRBの目標である2%を依然上回り、関税の影響でさらに上昇する可能性がある中でも、労働市場を支援するためFOMCが今月利下げする必要があるとの見方が強まった。

FOMCは9月会合後、年内あと2回会合を開く。10月28、29日と12月9、10日だ。

今回の雇用統計の発表以前から、夏の間における雇用増加ペースの大幅な減速を受けて、パウエルFRB議長をはじめ政策当局者はリスクバランスがインフレから失業へとシフトしているとの認識を示していた。

パウエル議長は、8月のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)での講演で利下げの可能性を示唆。また9月4日にはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が、「時間をかけて」利下げするのが適切になると述べたほか、リスクバランスの変化に言及した。

DWSアメリカの債券責任者ジョージ・カトランボーン氏は「雇用統計の弱さはもはや無視できず、一時的なものとして片付けることもできない」と語った。

ただし利下げに前向きな当局者も、次回会合では激しい議論が予想される。クリーブランド連銀のハマック総裁やカンザスシティー連銀のシュミッド総裁など一部当局者は、関税などの政策が持続的な物価上昇圧力を再燃させるリスクについて懸念を表明している。

原題:Fed Rate-Cut Expectations Climb Following Weak Job Market Report(抜粋)

--取材協力:Michael MacKenzie.

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