(ブルームバーグ):大都市や大自然を旅行するのに最も適した秋のシーズンがやってくる。
常に進化する都市部では、夏の間に別の場所で過ごした住民が戻ってくるのに合わせて、レストランのオープンや美術館の新規展示が相次ぐ。多くのビーチリゾートでは夏のピーク料金を避けつつ、快適な気候を満喫できる絶好の機会が与えられる。
関税や世界経済の不透明感の影響で海外旅行全体が縮小傾向にある今年ほど、そう言えるかもしれない。以下に紹介する5つの場所は、2025年旅行先マスターリストから厳選された秋にぴったりの目的地だ。米国・欧州の主要都市からなら、少し長めの週末旅行として訪れることが十分可能な距離にある。
ニューヨーク・アッパーイーストサイド
マンハッタンの高級住宅街として知られるアッパーイーストサイドが、トレンド発信地のように変化している。マディソンアベニューはかつて高級ブランドと、「ルブタン」の赤い靴底のハイヒールを履いた買い物客のためのエリアだったが、空き店舗が続出したコロナ禍を経て、ロサンゼルス発の「バイオレット・グレイ」や、「ラジャンス」など旬のブランドの旗艦店が進出している。有名ブランドが多数出店する他の主要ショッピング街とは異なり、洗練されたセレクト感を漂わせている。
レストランもかつてないほど活気づいており、「シェ・フィフィ」や「ル・カフェ・ルイ・ヴィトン」などは予約が困難。ホテル業界では、老舗がリニューアルしている。高級ホテルのザ・サリーは現在、コリンシア・ホテルとなり、マイアミ発の人気レストラン「カーサ・トゥア」が1階に入って華やいだ社交場となっている。
このエリアの芸術施設も見逃せない。何度訪れても再訪の価値がある。メトロポリタン美術館では改修を終えたロックフェラー・ウイングが再オープンし、アフリカ、古代アメリカ、オセアニアの新たなコレクションを展示中。また、フリック・コレクションは5年の歳月と3億3000万ドル(約490億円)をかけて改装を終え、今年再開された。
ギリシャのパロス島とアンティパロス島
今夏のミコノス島のリゾートで最も人気を集めたサービスの一つが、隣島パロス島までのスピードボート移動だったことは時代を映すサインだろう。パロス島と妹島アンティパロス島への関心が急上昇しており、アメリカン・エキスプレス・トラベルも、カード会員の予約急増を根拠に、パロス島を今年注目の旅行先リストに挙げた。
この地域の魅力は、澄みきった海、カイトサーフィンに最適な風、伝統的な白壁の建築物というギリシャらしさの三拍子そろった環境だ。
ナイトライフで有名なミコノスに比べ低価格な選択肢とされてきた両島だが、今では注目度が高まり、お値打ち感が薄れた。アンティパロス島で最も人気のホテル、ザ・ルースターは9月中旬の宿泊料が1泊2500ドルに達することもある。10月に入ってしばらくするとシーズンオフの休業に入るが、他のホテルなら営業が続いている。中でも客室33室のデザインホテル、パリロは10月25日まで1泊370ドルから宿泊可能。ミシュランの二つ星を獲得したレストランも併設されている。
ロンドン
ロンドンで今年、最も活気があるのはエリザベス線沿線だ。中でも大きな話題を呼んでいるのが、グロブナースクエアにある旧米国大使館。エーロ・サーリネンが設計したこの建物は改装され、8月下旬に高級ホテルのチャンセリー・ローズウッドに生まれ変わった。
144室を備えた同ホテルにはアヴロコ-が内装を手がけたブラッスリー「セラ」や、ニューヨークの名店「カーボーン」と「マサ」の支店など、超クールな飲食店が集結している。屋上にはハイドパークを見渡せる「イーグル・バー」があり、仕事帰りの一杯を楽しめるスポットとして人気急上昇中だ。
ローマ
イタリアのファッションの中心地と言えばミラノで決まりだが、2025年はバチカンの聖年「ジュビリー」を機に、ドルチェ&ガッバーナやディオールなどのブランドがファッションショーの開催地を永遠の都ローマに移した。オートクチュールを追う人々を除いて、ローマ教皇関連の祝典期間に当初3千万人の訪問が見込まれていたが、5月初旬にバチカンで新教皇選出を知らせる白煙を見るためだけに25万人が詰めかけており、来訪者数はさらに増えそうだ。
秋はその騒しさも一段落し、人気レストランの予約も取りやすくなる上に、ホテル料金も落ち着く。新しく開業した「ロメオ・ローマ」や「オリエント・エクスプレス・ラ・ミネルバ」も、オープンから数カ月たち、運営も軌道に乗り始めた。地下鉄の新路線やナボーナ広場の改修など大規模イベントを支えるインフラ整備も完了している。
スペイン・カナリア諸島
太陽に照らされ、ヤシの木が点在するカナリア諸島の人気には明確な理由があるわけではないが、ジェット機で飛び回る多くの旅行者が大西洋に浮かぶ7島から成るこのスペイン領を次々と訪れている。25年に開業予定で注目されていたホテルは不思議なことに全て延期となったものの、44軒の新規ホテル(客室数6000余り)が計画中。全て28年までにオープンする予定で、トレンドが上向きであることは明らかだ。
特にグラン・カナリア島では、ロペサン・グループによる1800室・70エーカー(約28ヘクタール)におよぶ大型開発が進行中。観光ブームを映すこうした急速な開発に地元住民から懸念の声も上がっている。つまり、手つかずの魅力が残っている今のうちに訪れるのが賢明かもしれない。おまけに、この地の秋は、他の地域で言うところの夏の延長だ。
原題:Five Perfect Weekend Trips To Take This Fall, From Greece to NYC(抜粋)
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