(ブルームバーグ):今週乱高下した欧州の長期債は、5日の取引で上昇している。週初に急落し、利回りが数十年ぶりの高水準を付けたため、この利回りに注目した投資家の買いが入っている。
市場で特に注目を集める英国債とフランス債は3日から30年債が反発に転じ、同利回りは週間で数ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下げて引けそうな勢い。政治と財政のリスクが意識された英国の30年債利回りは週半ばに5.75%と1998年以来の高水準を付け、フランスの30年債利回りも2011年以来の水準に上っていた。
インフレ高止まりや政府の借り入れ増加に対する懸念から、世界的にも長期債は神経質な動きを続けている。地合いはぜい弱で財政不足に対する懸念はなお強いものの、この利回り水準ではリスクを積極的に取りに行く投資家はいる。
ユニオンバンケールプリヴェ(UBP)のポートフォリオマネジャー兼チーフストラテジスト、モハメド・カズミ氏は「魅力的な利回りの確保、という点に尽きる」と英30年債利回りの動きについて指摘。「数年前であれば、これに近い利回りを得るにはかなりのハイイールドか、新興国市場のリスクを取らなければならなかっただろう」と述べた。

フランス債を巡る状況は、バイル首相が8日の内閣信任投票の実施を発表し、政治懸念が強まったことで悪化した。英国債もレイナー副首相に税金逃れ疑惑が浮上したうえ、11月に発表される予算案で財政不足をどう埋めるのか臆測が飛び交う中で、売り圧力がかかった。
両国債の下落は、供給面の要因もあった。英国は2日にシンジケート団を通じて10年債を、フランスは4日、10年債と30年債を入札方式でそれぞれ発行した。この新発英10年債は高利回りが人気を呼んで1410億ポンド(約28兆1600億円)を超える買い注文が入り、調達額は過去最高の140億ポンドに上った。フランス債も無難な消化で、相場の反転を促した。
ただ、今後見込まれるリスクは数多く、それが再び長期債の地合いを損ねる恐れがある。バイル仏首相は来週退陣を迫られる公算が大きく、フランスには3社による格付け見直しも予定されている。英国のリーブス財務相は増税と支出削減の選択を迫られる。
ジェフリーズによると、これは長期債利回りの安定が長続きしそうにないことを示しており、利回り曲線はスティープ化を続ける見通しだ。
「英国とフランスの超長期債に対する懸念は現在の財政状況だけでなく、不人気な財政改革を断行する政治家の意欲のなさにも関係している」と、ジェフリーズ・インターナショナルのチーフ欧州ストラテジスト、モヒト・クマール氏は指摘した。
一方、そうした懸念を脇へ置くこともいとわない市場参加者も多い。ヘッジファンドのキャリブレート・パートナーズは今週、英30年債を「株式のような」リターンが見込めるとして推奨し、UBSグループは仏30年債に投資妙味があると評価する。
UBSの欧州金利戦略責任者、レイナウト・デボック氏は「仏30年債の高パフォーマンスが期待できる」と述べ、同債券について4日に買いの推奨を開始した。現在の利回り水準は「国内外両方の投資家を引き寄せるだろう」との見方も示した。
原題:Highest Yields in Decades Lure Buyers to Volatile European Bonds(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.