自民党の森山裕幹事長が両院議員総会後の会見で辞意を表明し、外国為替市場の円相場は対ドルで一時急落した。市場関係者の間では、財政規律派と目される同氏の辞任で財政拡張路線に向かいやすくなるとの見方に加え、党内の混乱が石破茂政権全体に波及し、政局が流動化する可能性にも警戒感が広がった。

円相場は日本時間2日の午後5時55分現在、1ドル=148円47銭で推移。一時ニューヨーク終値比1.1%安の148円79銭まで下げ幅を広げた。債券市場では先物が夜間取引で一時137円33銭と、通常取引終値の137円52銭から下落。株式市場では大阪取引所の日経平均先物が夜間取引で一時4万2050円と、通常取引終値4万2350円に対し下げた。

森山氏は2日、参院選結果の責任を取り、退任する考えを表明した。扱いについては任命権者である石破首相(党総裁)に一任するという。石破首相は記者団に、森山氏の進退は適切に判断するとしたほか、しかるべき時期に責任を判断すると発言。これを受け、円は下げを縮めた。

共同通信の報道によると、鈴木俊一総務会長と小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長も退任する意向を石破首相に伝えたという。

【市場関係者の見方】

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャー

  • 財政規律派の森山幹事長が辞めることで財政拡張路線にかじを切りやすくなり、積極財政を期待されていることが円売りにつながった
    • 財政悪化して金利上昇するのではないかという点と、日本銀行の利上げがしにくくなるなどの思惑が高まって円が売られている
  • サプライズまではいかないが、森山氏の辞任まで市場は織り込んでいなかった
  • 石破首相の進退もまだ見通せず、今回はあくまで幹事長が代わるということで動きは長続きしないだろう

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジスト

  • ドルが買われていたところに、森山幹事長の辞任の報道を受け円安が加速した
  • 石破首相が残るには森山氏が踏みとどまることが必要とみていたので、退陣が意識されて円売りにつながったようだ
  • 円安の流れがどうなるかは、米国市場で今夜米供給管理協会(ISM)製造業指数の発表があり、レーバーデーの祝日明けの米国市場の動向を見極める必要がある

クレディ・アグリコルCIBのシニア・ストラテジスト、デビッド・フォレスター氏

  • 森山幹事長の辞任で石破総裁が自民党を結束させられなくなる可能性が高まった。政治リスクが再び円相場を圧迫している
  • 石破氏も森山氏に続いて辞任すれば、自民党がアベノミクスへ急激に回帰する可能性がある。アベノミクスはより積極的な財政政策を意味する
  • 日銀に利上げを見送らせる圧力となり、日本の財政持続の可能性への懸念も高まる可能性
  • いずれも円にとってマイナス材料だ。石破氏が辞任した場合、昨年の総裁選で次点だった高市早苗氏が首相となる可能性がある。高市氏は積極的な財政政策を支持している

ラボバンクの通貨戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏

  • 市場は日銀の氷見野良三副総裁の講演で利上げのヒントがなかったことに失望していたが、国内で続く政治不安を背景に日銀にとって10月の利上げが結局は時期尚早となる可能性が懸念されている
  • 市場は9月の日銀決定会合で手がかりが得られることを期待しているだろう

--取材協力:ジョン・チェン.

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