ドルは8月に値下がりした。インフレが進行する中でも、市場関係者は米国の経済減速と利下げを視野に入れている。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は同月1.7%下落した。7月は2.7%の上昇で、ドナルド・トランプ氏が米大統領に返り咲いて以来、月間で初めてプラスのリターンを記録していた。

米経済に減速の兆しが見られ、米金融当局は再び利下げに動く見通しだ。ドルは年初来で8%下落しているが、下げをさらに拡大するとの見方がウォール街で広がっている。

これに加え、トランプ大統領が、米金融当局の信頼性や経済統計の正確性に疑義を呈していることも、ドルの魅力を一層損ねている。

TDセキュリティーズの通貨戦略責任者、ジャヤティ・バラドワジ氏は先週のリポートで、「米政権の最近の行動には、長期的な影響がある」とし、「これによりドルの安全資産としての評価が損なわれ、リスクプレミアムがドルの重しとなるだろう」と指摘した。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る懸念は、ドルの魅力を低下させてきた。トランプ氏はクックFRB理事の解任に向け動いたが、クック氏はトランプ氏に抗議し提訴。長期化が予想される法廷闘争が始まった。

ブレイナード前FRB副議長は、トランプ米大統領による政治的な駆け引きの結果として、来年に複数の地区連銀総裁が解任される現実的なリスクがあると指摘している。

ナインティワン・アセット・マネジメントのインベストメント・インスティテュート・ディレクター、サヒル・マータニ氏は、「もしトランプ氏が米連邦準備制度との関係をリセットするなら、新興国で見られるような動きに類似するものとなり、ドルの強気材料とは言いにくい」と指摘した。

原題:Dollar Set to Weaken Beyond August on Rate Cuts, Trump-Fed Fight(抜粋)

--取材協力:Carter Johnson、Naomi Tajitsu.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.