(ブルームバーグ):夏は例年、M&A(企業の合併・買収)が低調となるが、今年は8月の案件ラッシュにより、夏期の取引総額が1兆ドル(約147兆円)を突破した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、6月初め以降に発表されたM&Aの総額は1兆500億ドルに達し、前年同期比で30%増加。新型コロナウイルスのパンデミックによるM&Aブームが巻き起こった2021年の記録的な夏以来、最も高い水準となった。
25年の案件として最大規模となる取引がこの期間に発表された。鉄道大手ユニオン・パシフィックは同業のノーフォーク・サザンを負債込みで800億ドル超で買収することで合意。サイバーセキュリティー企業パロアルトネットワークスによる、同業サイバーアーク・ソフトウェアの約250億ドルでの買収計画も発表された。
8月単月では約3000億ドル相当の取引が発表された。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社トーマ・ブラボーによる人事労務ソフト会社デイフォースの非公開化買収などの大型案件もあった。
ブルームバーグがまとめたデータによると、25年のこれまでの取引総額は2兆7000億ドルに上り、24年の同時期を25%以上上回っている。
米政権交代がM&Aを後押ししたとする見方もある。クリフォード・チャンスの米州法人部門責任者、ベン・シベット氏は「M&A市場の回復には当初想定よりも時間がかかったが、政権交代は間違いなく現在の活発な動きの一因になっている。この夏は、いわゆるメガディールの急増が見られた」と語った。
米国でレイバーデーの祝日となる9月1日を控えた例年静かな1週間でさえ、M&Aの勢いは衰えていない。
キューリグ・ドクターペッパーはJDEピーツを157億ユーロ(約2兆7000億円)で買収することで合意。また、AT&Tはエコースターから周波数ライセンスを230億ドルで取得する合意を発表した。
8月27日にはSOMPOホールディングスがアスぺン・インシュアランス・ホールディングスを買収することを明らかにした。
この夏のM&A急増は、年初の低調な出だしからの力強い回復ぶりを示している。年明けには、トランプ米大統領の通商政策を巡る不透明感が市場のボラティリティーを高め、M&Aへの関心を冷え込ませていた。
クリフォード・チャンスのシベット氏は「経済環境と資金調達市場が安定し始め、株式市場が過去最高値を更新、規制環境も緩やかになる様子の中で、企業の経営陣に再び自信が戻ってきている。年内はさらに多くの案件が動き出すと見込んでいる」と話した。
原題:Dealmakers Top $1 Trillion in M&A With Best August Since ’21 (1)(抜粋)
--取材協力:Michelle F Davis.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.