ソフトウエア企業は、高い利益率や資本要件の少なさ、成長余地の大きさで長年ウォール街で人気だった。だが今は投資家が熱狂している人工知能(AI)がこうした企業の脅威になっている。

セールスフォースとアドビ、サービスナウはS&P500種株価指数の構成銘柄の中で今年パフォーマンスの悪さが目立ち、株価は少なくとも17%下落している。時価総額は3社合計で約1600億ドル(約23兆6500億円)失われた。

EPFRのデータによれば、投資家はソフトウエアサービス部門から6月までの2カ月連続で資金を引き揚げた。それ以前の1年半で資金流出があったのは1カ月のみだった。

モルガン・スタンレーが選定するソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS、サービスとしてのソフトウエア)関連企業の株式バスケットは今年に入って6%余り下落。11%上昇しているハイテク株中心のナスダック100指数と対照的だ。

 

AIは教育や人材サービスなどの業界を大きく変える可能性がある。投資家は特に、顧客管理やバックオフィス機能などデジタルサービス向けのプログラムコードを書いているソフトウエア企業が危機にあるとみている。

ブレイブ・イーグル・ウェルス・マネジメントのロバート・ルジレロ最高投資責任者(CIO)は「テクノロジーの陳腐化は突如として起こり得る。慎重な姿勢が強まっているのには十分な理由がある」と指摘する。

こうした警戒は一部のソフトウエア銘柄にとって逆風だが、投資家が業界全体に失望しているわけではない。マイクロソフトやオラクル、パランティア・テクノロジーズはいずれもソフトウエア開発会社だが、今年のS&P500で最も好調な銘柄に入っている。

勝ち組

こうした企業はAI分野で攻めの姿勢を取っている点が特徴だ。大手企業は製品開発とAIコンピューティングの拡充で数百億ドル規模を投じている。

 

しかし、顧客の生産性を高めるデジタルツールを高価格で提供する企業の多くは、AIがその提供価値を揺るがすという脅威に直面している。コスト意識の高い銀行や小売事業者が実質的に同じサービスをより安価に受けられるなら、そのビジネスモデルは全て崩壊してしまう。

ライ・コンサルティング・グループのチーフ投資ストラテジスト、マーク・ブロンゾ氏は「古いテクノロジーに固執する企業は苦境に陥るか方向転換を迫られる。それがうまくいかなければ、株価に反映される」と述べ、「以前ならセールスフォースのような企業が過去の評価水準より割安になれば買い戻しがあった。しかし今はそうした動きは見られない」と説明する。

 

一方、スイスの銀行UBSグループのストラテジストは、値下がりしている一部の銘柄が買い時をもたらす可能性があると分析。AIブームに出遅れたインターネットやソフトウエア企業への投資を今月推奨している。

それでも現時点ではソフトウエア業界に対する投資家の慎重姿勢は明らかだ。ルジレロ氏によれば、「現時点で言えるのはメタ・プラットフォームズやマイクロソフトといった一部の企業が勝ち組に見えるということだ。全ての企業ではないのは確か」だ。

原題:AI Disruption Fear Sparks Investor Scrutiny of Software Stocks(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.