(ブルームバーグ):トランプ米大統領による関税措置やカナダ併合などといった数々の侮辱的な発言によって、カナダ国民は憤りを募らせ、米国の不動産を売却した。米国製品の不買運動さえ見られたが、カナダの株式投資家はこうした動きに追随しなかったようだ。
ナショナル・バンク・オブ・カナダ・ファイナンシャル・マーケッツのマネジングディレクター、ウォーレン・ラブリー氏のデータによれば、カナダの投資家が2025年に米株式市場に投じた資金は1240億カナダドル(約13兆2000億円)に上った。少なくとも1990年代以降で最大規模になる勢いだ。
カナダ人投資家にとって米国株の魅力は依然として根強い。米国株のパフォーマンスは過去2年間、カナダの主要株価指数を上回っている。
トランプ政権2期目が今年発足し、両国関係が一層緊張する中で、この旺盛な投資意欲の背景を正確に突き止めるのは容易ではないが、米国のテクノロジー大手を過去最高値に押し上げている人工知能(AI)ブームへの期待が大きな要因とみられている。
バンクーバーを本拠とするペンダーファンド・キャピタル・マネジメントのグレッグ・テイラー最高投資責任者(CIO)は「パフォーマンス追求が主な動機だ」とし、AIの台頭と巨大ハイテク株への資金流入が米国株の好調を支えていると分析した。

今年はカナダ株の方が優勢だ。カナダの代表的な株価指数S&Pトロント総合指数の上昇率は約14%と、S&P500種株価指数の9.5%上昇を上回っている。
それでもラブリー氏が今年の調査を踏まえて先週公表した顧客向けリポートによると、カナダ人投資家は「カナダ株買い・米国株売り」という方針を採用していないようだ。
25年に入り、米国産酒類がカナダの店頭から撤去され、両国間の観光も落ち込んでいるが、ラブリー氏はカナダ人投資家による米国株への投資規模は「非常に驚くべき水準だ」と説明している。
一方、カナダの年金プランサービス大手サン・ライフ・ファイナンシャルによれば、今年の関税戦争を受けて、一部のカナダ人投資家が米資産からの資金移動を進めたという。
米国との貿易戦争が緩和する兆しを受け、カナダの主要株価指数は22日に今年30回目となる最高値更新となった。カーニー首相は同日、米国製品に課していた報復関税のうち、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠する製品に関しては撤廃すると表明した。
ペンダーファンドのテイラー氏は、数年間にわたりアウトパフォームしてきた米国株よりもカナダや欧州の株式の方が現時点で魅力的だと述べた。
原題:Canadians Load Up on US Stocks Despite Trump’s Trade War (1)(抜粋)
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