(ブルームバーグ):新興国市場の資産が今後、先進国市場を上回るリターンを生むと、大手資産運用会社が予想した。トランプ米大統領が4月に関税政策を打ち出して以来、両市場は連動して動いていたが、今後は差が出る見通しだという。
フィデリティ・インターナショナル、ティー・ロウ・プライス、ナインティワンによれば、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げの可能性や、米資産からの資金シフト、新興国における保守的な財政政策が、新興国市場の優位性を後押しする見込み。インフレ動向も新興国に有利に働くと予想されている。
ファンドマネジャーらは、新興国株で構成されるMSCIエマージング・マーケット指数が今後1年で約15%上昇すると予想。先進国株の指数の上昇率約10%を上回ると見込んでいる。世界の主要な上場投資信託(ETF)への資金流入も、新興国株ファンドの方が速いペースで増えている。
フィデリティのファンドマネジャー、ジョージ・エフスタソプロス氏(シンガポール在勤)は「大半の新興国で金融緩和が進み、国内の融資や消費が活性化している。さらに、ドル安も追い風となっており、新興国株はアウトパフォームする可能性が高い」と分析した。「最も影響力のある中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が今後、再び利下げに動く公算が大きいことも忘れてはならない」と指摘した。
トランプ氏が4月2日に「解放の日」関税を発表して以来、世界最大の新興国ETFであるiシェアーズ・コアMSCIエマージング・マーケッツETFには約58億ドル(約8550億円)が流入。これは同ファンド総資産の約5.8%に相当する。
同規模の先進国向けファンドであるバンガード・FTSE先進国市場ETFへの資金流入は56億ドルで、これは総資産の約3.3%に相当する。
新興国資産は、パウエルFRB議長が23日、ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で9月利下げの可能性を示唆したことで、追い風を受けた。議長の講演後、9月16、17日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げの観測が強まった。
MSCIエマージング・マーケット指数と先進国の指数は、4月2日以降いずれも約14%上昇している。トランプ氏による関税措置の警告が主に交渉戦術であるとの楽観的な見方が広がったことが、両指数の上昇要因となった。債券市場でもほぼ同様の動きが見られ、ブルームバーグの新興国債券指数と先進国債券指数はそれぞれ4%と3%のリターンを上げている。
ナインティワンの新興国株ファンドマネジャー、アーチー・ハート氏(ロンドン在勤)は、新興国資産が他地域を上回る可能性が高い理由の一つとして、より正統的で、市場に配慮した財政政策が採られていることを挙げた。
「新興国の政策当局は保守的で、市場によって規律を保たれ、現実的な対応をしている。そのため、先進国で見られるような巨大で持続不可能な財政赤字は見られない」と指摘した。
ティー・ロウ・プライスによれば、現在の新興国市場はバリュエーションの面でも魅力がある。
シンガポール在勤のポートフォリオマネジャー、トーマス・ポーラウエック氏は「先進国市場に比べてバリュエーションが割安な上、利益成長率の見通しも高いため、当社のマルチアセットポートフォリオでは新興国株をオーバーウエートにしている」と述べた。
同氏はまた、一部の新興国通貨について依然として投資妙味があるとしながら、選別が重要だと指摘した。
「新興国通貨の上昇余地の多くは既に織り込まれており、特にドルのショートポジションが過度に積み上がっている現状を考えると注意が必要だ」としつつ、「それでも中南米通貨には引き続き前向きなスタンスを取っており、とりわけブラジル・レアルは、高いキャリートレード収益と改善しつつある財政見通しが支えとなっている」と語った。
比較的落ち着いたインフレ環境を背景に、新興国の債券も有望視されている。フィデリティのエフスタソプロス氏は「インフレの鈍化や総じて穏やかな財政赤字など新興国の現地通貨建て債券を押し上げてきた追い風は続いている」とし、「一方、先進国の債券市場は、拡大する債務残高と大規模な財政赤字という問題に直面している」と指摘した。
原題:Emerging Assets Set to Pull Ahead of Developed Peers, Funds Say(抜粋)
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