(ブルームバーグ):25日の日本市場では株式が続伸。米国でパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を受けて利下げ観測が高まり、景気懸念の後退から米国株が急伸した流れを引き継いだ。円の対ドル相場は前週末の大幅上昇の反動から下落、債券は先物が小幅安となった。
パウエル議長は22日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演し、「政策スタンスの変更を検討する上で慎重に進むことが可能になる」と述べた。利下げ期待から同日の米国株式市場ではダウ工業株30種平均が過去最高値を更新し、S&P500種株価指数は5月以来の大幅高となった。
バンエックのクロスアセット・ストラテジスト、アンナ・ウー氏(シドニー在勤)は「パウエル議長の講演はハト派的であり、9月利下げの障害を取り除きリスク選好のセンチメントを高めている」と話した。
米株高に追随し、週明けの日本株も大幅高で始まった。ただ、米国が利下げすれば円高が進んで市場心理を圧迫するとの懸念や短期的な過熱感からその後伸び悩み、東証株価指数(TOPIX)は小幅安に転じる場面も見られた。
みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、ジャクソンホール会合を受けて為替は円高に向かう見込みで、投資家は日本株に資金を集中しにくくなるだろうと指摘する。最近の日本株の最高値更新も一部に警戒感を呼んでいるとし、日経平均が4万3000円を超えると割高感が出て、投資家は利益確定に動きたくなると述べた。
株式
東京株式相場は続伸。ソフトバンクグループやディスコ、アドバンテストなど人工知能(AI)関連が買われ、商社や機械、サービスなども高い。半面、小売りや電気・ガスなどの内需関連、食料品、医薬品などディフェンシブ株は安い。
KCMトレードのチーフマーケットアナリストであるティム・ウォタラー氏は、FRBが利下げすれば日本のハイテク株は大きな恩恵を受ける可能性があると指摘。「米金利が低下すれば投資家はリターンを求めて海外に目を向けることになり、日本のハイテクセクターがより大きな資金流入の受け皿になり得る」と述べた。
外国為替
円相場は反落。パウエルFRB議長が9月利下げの可能性を示唆し、日本銀行の植田和男総裁が持続的な賃金上昇圧力を強調したことで、日米金利縮小観測からドル売り・円買いが進んだ前週末の反動が出た。
円は一時1ドル=147円53銭まで下落。22日の海外市場では148円台半ばから一時146円58銭と約1週間ぶりの水準まで急伸していた。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、ジャクソンホール会合でドル・円は2円近く動いたが、イベントが終わり同様の動きが再び起こるとは想定できないと指摘。パウエル議長は9月以降の政策判断はデータ次第としており、積極的な利下げの意向は読み取れず、ドル・円は「上下とも新値は試しにくい」と述べた。
債券
債券相場は先物が小幅下落。日銀の利上げ観測を背景とした売りが優勢だった。現物債はパウエル議長講演後の米長期金利低下を受けた買いも入り、20年債は上昇した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは「日米の金融政策は逆方向を向いており、米長期金利が下がったからといって日本国債は買いにくい」と語る。株高も景気の強さを表していると解釈することができ、「日銀の利上げには追い風になる」と指摘した。
植田日銀総裁は23日、ジャクソンホールで行われたシンポジウムに出席し、「労働市場は引き締まった状態が続き、賃金には上昇圧力がかかり続ける」との見方を示した。藤原氏は「賃金の上昇に言及したことで、利上げに自信を持っていることが示された」と言う。
スワップ市場が織り込む9月の米利下げ確率は9割近く、日銀の利上げは10月までが5割強、年内は7割強となっている。
新発国債利回り(午後3時時点)
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
--取材協力:アリス・フレンチ、我妻綾.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.