ポイント解説:次期公的年金シミュレーターの案と今後への期待

年金広報検討会は、2026年度から開始される予定の次期公的年金シミュレーターについて議論した。本稿では、現時点の案を確認し、今後への期待を整理する。

先月の動き

資金運用部会は、2024年度の単年度と2020~2024年度の第4中期目標期間に対する厚生労働省の評価案を議論し、了承した。

年金広報検討会は、今後の進め方を確認し、次期公的年金シミュレーターと年金教育について議論した。

年金数理部会は、ピアレビューの作成に向けて、厚生労働省などから2024年財政検証について説明を受けた。

ポイント解説:次期公的年金シミュレーターの案と今後への期待

年金広報検討会は、2026年度から開始される予定の次期公的年金シミュレーターについて議論した。本稿では、現行のシミュレーターと次期シミュレーターの案を確認し、今後への期待を整理する。

1|現行サービスの概要:個人の加入記録や今後の働き方の設定に基づいた年金額を簡単に概算可能

公的年金シミュレーターは、年金見込額を簡単に試算できる仕組みとして2022年度に開始された。

ユーザー登録を行わなくても、「ねんきん定期便」に印字された2次元コードをスマートフォンなどで読み取ることで、個人の加入履歴を反映した簡易試算を行える。

加えて、画面のスライドバーを操作すると、今後の働き方・収入・退職年齢・受給開始年齢を変更した際に年金額がどのように変わるかを、繰上げ/繰下げ受給・在職老齢年金・在職定時改定を反映した上で、即時に確認できる。

この仕組みは、2022年度から2024年度までに761万回超の試算に活用されているが、2025年度末に現行サービスの保守・運用が終了するため、2026年度から新たなサービスが開始される予定である。

2|次期サービスの案:障害年金とiDeCoも試算可能に

2026年度からは、現在の老齢年金の試算機能が改良され、障害年金とiDeCo(個人型確定拠出年金)も試算が可能になる予定である。

老齢年金は、分かりやすい言葉への変更や、年金額の内訳(1階部分の基礎年金と2階部分の厚生年金)の明示などが、改良点として予定されている。

障害年金は、内閣府が行った世論調査で割の認知にとどまり、受給要件を知りたいというニーズが多かったことへの対応策として、追加される。

検討会では、給付水準を示す画面について議論し、給付期間の誤認を招きにくい案を推す意見が多く出た。

iDeCoは、すべての国民年金の加入者が加入できる同制度について仕組みや特徴を周知し、試算機能を通じて、iDeCoを利用していない人などに具体的なイメージを持ってもらうために追加される。

今回の案では、積立期間だけでなく受給期間も示す点が、評価されている。

一方で、公的年金と違い年金額が物価や賃金の変動に連動しない点や運用利回りが必ずしも保証されていない点などが誤認されうる、という指摘がある。

3|期待:iDeCoで複数の利回りの結果を同時に表示。電子版ねんきん定期便へのリンク埋め込みも

老齢年金や障害年金の内訳の表示は、見た目が複雑になるが、会社員も基礎年金を受け取ることを周知する点で、今後の制度改正の議論に役立つと思われる。

iDeCoの表示は、まずは、すべての画面で、資産の減り方の図のように複数の利回りでの結果を同時に示すことで、将来の変動をある程度示せるだろう。

公的年金と年金額の性格が違う点は、海外の同様なサービスの説明を調査することも、一案だろう。

※記事内の「図表」と「注釈」に関わる文面は掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋邦夫)