スペインのサンチェス首相は、加速する気候危機への対応で、あらゆるレベルの政府が結束する全国的な協定の締結を呼び掛けた。同国を含む欧州南部ではここ数日、熱波に見舞われ、各地で山火事が発生。強風により火の手が森林や農作物に広がっている。

17日時点では、スペインのほぼ全域で発生リスクが極めて高い状態にあり、北西部や中部、南部で多数の山火事が発生している。一部地域では気温が摂氏44度に達する見込みで、数千人が避難した。

ガリシア州の消防士(8月10日)

サンチェス首相は17日、北西部ガリシア州で「世界を荒廃させている気候危機は、特にイベリア半島のような場所でますます加速し、深刻化し、頻発している」と指摘。「気候危機に対する適応と緩和に向けた大規模かつ全国的な協定を提案する」と述べた。ガリシア州は今回の山火事で特に大きな被害を受けた地域の一つ。

スペインでの山火事は政治論争に発展している。被害が大きいガリシア、カスティーリャ・イ・レオン、エストレマドゥーラ3州はいずれも保守派の野党「国民党(PP)」が州政府の実権を握っている。一方、一部の地方政権で国民党と連立を組んでいた極右政党「ボックス(VOX)」の政治家らは、気候変動を否定する発言を繰り返している。

サンチェス政権の山火事対応を巡っては、軍を動員していないと批判もあるが、政権はこれまでも軍の緊急対応部隊を投入している。サンチェス首相は追加で500人の軍隊を山火事対応に派遣すると表明した。16日時点では1400人が直接的な消火活動に、2000人が支援業務に従事している。

乾いたやぶの定期的な除去など山火事予防策の多くは地方政府の責任となっている。

ガリシア州のルエダ州首相(国民党)と並んで演説したサンチェス氏は、気候に関する災害への対応力を高めるため、党派に関わらずに全国的な協力を強化する計画を来月発表する意向を示し、「協定で気候危機を政治的な争いから切り離す」と述べた。

原題:Spain’s Sanchez Urges National Climate Pact as Fires Rage (1)(抜粋)

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