(ブルームバーグ):東京海上アセットマネジメントは、金利のある世界となり運用サービスへの顧客ニーズが高まるとして、オルタナティブ(代替資産)やリサーチなど運用部門を中心に人員を増強する。
6月に就任した長沢和哉社長は13日のインタビューで「お金を寝かしていても運用してもほぼ変わらない世界から一歩進んできた。マクロ経済的な環境から見ても非常にいいタイミングになっている」と述べ、「今から積極的にリスクを取っていく」と表明。具体的には、社員数を現在の約450人から3-5年で550人程度まで増やす。
長期にわたる日本銀行の異次元緩和により低位安定が続いていた日本国債利回りは、昨春からの金融政策の正常化に伴い上昇基調を強めている。東京海上AMは金利上昇が投資家のリスク志向を強める好機とみて人員を強化。運用部門で50人、海外拠点担当で10人、個人投資家と金融法人の両部門の営業などでそれぞれ20人を想定する。
長沢氏は一方で、長期金利は「中長期で見るとまだ低い。10年金利は2%超に上がるだろうし、30年金利も現状よりもっと上がってもおかしくない」と述べた。短期的には市場の流動性低下により「大きな価格変動が起こり、不用意な損失を生み出し得るので非常に怖い」とも言い、「流動性を伴って緩やかに上がることが重要だ」と指摘した。

日銀の利上げ観測や政局に絡んだ財政政策の不透明感から、投資家の間では超長期金利を中心に先高観が強い。海外でもドイツの30年債利回りが2011年以来の高水準に達するなど、金利上昇圧力が高まっている。
一方、ブルームバーグが算出する日本国債流動性指数はさかのぼることができる07年以降で最悪の水準にある。投資家の様子見姿勢が強まれば流動性のさらなる低下を招き、金利が一段と上昇するリスクがある。
長沢氏は、金利上昇により「投資のうまみが出てきている」としながらも、「どのくらいのスピード感でどれだけ金利が上がるか合意が形成されるまでは、不確実性が高く手が出せない」と指摘。その上で、今は金融政策正常化に伴い、中長期的に合理的な均衡水準に向かう過程にあるとし、金融当局による「市場に対するガイダンスなど、コミュニケーションの重要性がさらに増している」と述べた。
金利のある世界
東京海上AMは市場平均を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ運用を中心に扱う。運用資産残高は6月末時点で約2兆8400億円の投資信託を含め計約9兆4000億円。
運用部門では、債券や株式などの伝統資産に代わるオルタナティブ分野で特長ある海外の運用会社を発掘する担当者や、新規投資案件を調査する人員を拡充し、「結果としてプロダクトの種類も拡大させていく」と意欲を見せる。株式やオルタナティブに注力する理由として、いずれもインフレに対して強いヘッジ機能があることを挙げた。
長沢氏は、地方銀行などの金融機関は「金利がないと収益期待が薄く、なかなかリスクが取れないが、金利が戻ってくるとある程度バッファーができて、いろいろなことができるようになってくる」と期待する。また、24年1月の新たな少額投資非課税制度(NISA)導入を機に個人投資家の間で指数連動型(パッシブ)の投信が普及する中、分散投資などの観点からも「今こそアクティブ運用の商品が重要性を増す」と語った。
--取材協力:平野和.
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