(ブルームバーグ):米住宅価格はこの10年余り、ヘリウム風船のように膨らみ続け、過去最高値を毎年更新してきた。だが、2025年に入りついにその風船がしぼみ始めている。
不動産サイト運営のジロー・グループは、一般的な米住宅価格を独自に推計した同社の住宅価値指数について、年末までに0.8%下落すると予想。年間ベースでの値下がりは11年以来となる。
住宅を購入できる状況にある一握りの人々はこの好機を生かすべきだ、とジローのシニアエコノミスト、オルフェ・ディボンガイ氏は助言する。住宅ローン金利の高止まりに加え、根強いインフレや関税を巡る懸念といったより広範な経済不安で競争が和らいでいる。
その一方で、住宅在庫は増加しており、買い手の選択肢が増え、交渉余地も広がっている。7月に売りに出された物件のうち値下げが提示されているのは27%と、月間ベースで18年1月以来の高水準となった。
それでも在庫の伸びは既に鈍化しつつあり、利下げ幅もごく小幅にとどまる可能性が高いため、チャンスはすぐに失われてしまうかもしれない。
こうした状況にどう対応すべきか、ディボンガイ氏が解説する。
購入は待つべきか、それともすぐに動くべきか-住宅価格は下落の見込み
今すぐ買える余裕がある人には、市場のタイミングを計ろうとしないよう伝えている。なぜなら、住宅ローン金利がどう動くかは誰にも分からないからだ。昨年は多くの人が「米金融当局が最初の利下げに踏み切るまで待とう」と言っていたが、同年9月に利下げが実施された際、住宅ローン金利は下がるどころか、実際には上昇した。現在の水準からはやや下がるとわれわれは予想しているが、大幅な低下は見込んでいない。
得られるものは何でも活用すべきだ。現在のように売れ行きが鈍ると売り手側も手控えがちになる。春の住宅購入シーズンが始まったときには、売り手が戻ってきたことで多くの物件が市場に出回った。だが、買い手は戻らず、売却を迫られていない売り手は、既に市場から手を引き始めている。
今は、買い手側の価格交渉力が強まっている。チャンスは目の前にあるが、長くは続かないかもしれない。だからこそ、すぐに購入できる人には、住宅バブル崩壊を期待して待つべきではないと助言している。バブル崩壊のような局面には通常、失業増加が伴う。そもそも定職がなければ、住宅ローンの審査に通るのは極めて難しい。
割安物件を狙うなら、どの地域を探すべきか
住宅市況は地域によってかなり異なる。例えば、建設があまり進んでいない北東部や西海岸などでは競争が比較的激しく、いわゆる売り手市場が続いている。一方、テキサス州やフロリダ州のように建設が活発な地域では、ここ数年間の人口増加にもかかわらず、住宅価格は下落。在庫が増え、価格が低下していることから、値頃感がかなり強まっている。
こうした地域ではお買い得ということか
それは結局、今後の保険料の動向に対する見方による。実際、こうした市場の多くで保険料の上昇が目立っており、特にここ1年はテキサス、フロリダ、ルイジアナ3州での伸びが顕著だ。価格調整が起きている背景には、供給の増加だけでなく、買い手の需要が後退していることもある。保険料が住宅価格の値頃感に影響し、需要後退を招いている可能性がある。
この状況は売り手にとって何を意味するか
大半の売り手が動くきっかけはライフイベントで、最も多いのは新たな職を得たときだ。労働市場が冷え込むと、居住移動性も低下する傾向がある。
将来的に雇用の維持や所得の伸びが見込めない人は、新しい車や家を買おうという気にはならず、財布のひもを締めるようになる。実際、貯蓄率はそうした理由で上昇している。
新型コロナウイルス禍以降の住宅価格上昇で、住宅所有者のホームエクイティー(住宅価格からローン残高を差し引いた持ち家の正味価値)は過去最高に近い水準にある。つまり、売り手には値下げする余地があるということだ。売却するかどうかの決定権は売り手側にあり、タイミングを自由に選べる非常に恵まれた状況にある。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
原題:Zillow Economist Says It’s a Good Time for Homebuyers(抜粋)
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