(ブルームバーグ):14日の外国為替市場の円相場は、対ドルで3週間ぶりの高値を付けるなど上昇が鮮明になった。ベッセント米財務長官が米国の大幅な利下げを求めたほか、日本銀行の利上げが後手に回るビハインド・ザ・カーブの可能性も指摘し、今後の日米金利差の縮小を意識したドル売り・円買いが広がったためだ。
円は一時1ドル=146円38銭と前日のニューヨーク市場の終値から0.7%上昇し、7月24日以来の水準となった。最近の円は7月の金融政策決定会合で日銀が金利を据え置き、植田和男総裁の発言も追加利上げに慎重なハト派的と受け止められたことで一時150円台後半と4カ月ぶりの安値に下落。先の参院選で与党が敗北し、財政の見通しが不透明になったことも円売り要因となっていた。

こうした中でベッセント長官は13日、米政策金利は現状より150-175ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い水準にあるべきだと発言。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での50bp利下げを皮切りに一連の利下げが適切だとも述べ、市場では利下げサイクル再開への期待が高まった。
また、同長官は「日本はインフレ問題を抱えており、日銀は後手に回っている」とし、今後利上げに踏み切るとの見方も示した。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、きょうの円高には2つの側面があり、ベッセント氏による連邦準備制度理事会(FRB)に関する発言と日銀に関する発言だと指摘。「日銀は遅くても12月に利上げに動くとの意見が出始め、10月利上げの予想も増える可能性がある」と言う。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストも、ベッセント氏発言が改めて材料視されたとし、ドルのサポートとなっていた147円を抜けたため、損失を限定する「ストップロス的なドル売り・円買い」の動きがあったのではないかとみている。
投資家の政策金利予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、米国について9月の25bp利下げが100%以上の確率で織り込まれている。一方、日銀が年内に利上げする確率の織り込みは60%程度だ。
ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏(シドニー在勤)は「ベッセント財務長官が発言すると市場は耳を傾ける。そして今、同氏は円高を望んでいる」と指摘。少なくともここ数日、市場はベッセント氏の発言をより注目しており、「その根底にはドルを押し下げるというテーマがある」と述べた。
--取材協力:Ruth Carson.
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