トランプ米大統領は11日、中国に対する関税停止措置を90日間延長し11月10日まで継続する大統領令に署名したと明らかにした。これにより、世界二大経済大国の貿易関係にひとまず安定がもたらされた。

トランプ氏の大統領令署名により、12日に予定されていた関税引き上げは先送りされた。米中双方が報復関税の応酬を緩和し、レアアース(希土類)磁石や一部技術に関する輸出規制を緩めた5月の合意に基づく休戦が延長される形だ。

トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「合意の他の要素はすべて従来通りとなる」と述べ、米国の通商政策や合意内容に変更はないとの認識を示した。ホワイトハウスが同日公表した説明資料でも、日付以外の変更点は詳述されていない。

中国も同様の声明で、自国の関税停止措置を90日間延長すると発表した。

両国の交渉担当者は先月、スウェーデンで休戦延長に関する暫定合意に達していた。休戦が延長されなかった場合、米東部時間未明以降、米国の中国製品に対する関税は少なくとも54%に引き上げられる予定だった。

関税戦争が再燃すれば、米中の貿易にさらなる打撃が及ぶとの懸念があったが、今回の措置により、こうした不安は緩和された。今年の米中貿易摩擦は世界の金融市場を動揺させた。

また合成麻薬フェンタニルの流通に関連した関税や、中国がロシア産やイラン産原油を購入していることへの懸念、さらには中国での米事業展開を巡る摩擦など、取り決め延長は他の問題を解決するための時間を両国に与えるものとなった。

さらに、トランプ氏が10月下旬に韓国で予定される国際会議の前後に中国を訪問し、習近平国家主席と会談する道を開く可能性もある。

トランプ氏は大統領令で、「米国は中国との経済関係における貿易の非互恵性や、それに伴う国家的・経済的な安全保障上の懸念に対処するため、中国側と引き続き協議を行っている」と説明。「こうした協議を通じて、中国は非互恵的な貿易慣行の是正と、米国の懸念に対処するための重要な措置を講じている」と付け加えた。

11日の記者会見でも同氏は「中国とは非常にうまくやっている」と語っていた。

トランプ氏は今年の早い時期に、中国製品への関税を大幅に引き上げ、中国側も報復措置として米国の製造業に不可欠なレアアース磁石の輸出制限を導入するなど対抗。米国の中国製品への関税は145%に達した。

その後、両国は5月に90日間の休戦に合意し、米国は中国製品への関税を30%に、中国は米国製品への関税を10%にそれぞれ引き下げたほか、レアアースの輸出再開に同意していた。

原題:Trump Extends China Truce for 90 Days, Averting Tariff Hike (2)、Trump Extends China Tariff Suspension for Another 90 Days(抜粋)

(トランプ氏のSNS投稿や大統領令の文面を追加して更新します)

--取材協力:Paul Abelsky、Charlie Duxbury、Olivia Tam.

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