(ブルームバーグ):11日の米株式相場は反落。主要インフレ統計の発表を12日に控え、大きな賭けに出る動きは手控えられた。S&P500種株価指数は最高値圏で失速した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを実施できるかどうか、投資家は手掛かりを求めて経済指標に注目している。トランプ米大統領が中国との関税休戦を90日延長すると伝わったが、市場の反応は限定的だった。
大型テクノロジー株はまちまち。テスラが上昇した一方、アップルは下落。トランプ氏は、エヌビディアが人工知能(AI)アクセラレータ「H20」の中国売上高の15%を米国に提供する予定だと述べた。当初はエヌビディアに対し、中国でのH20販売について「米国に20%の取り分を要求する」と伝えていたが、最終的には15%で合意したという。同氏は「ちょっとした取引をした」と語った。
12日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)では、基調的なインフレがわずかに加速したとみられる。輸入関税の引き上げに伴い小売業者がさまざまな商品で徐々に値上げに動いた。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%上昇の予想。6月は0.2%上昇だった。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「CPIの数字が予想外となった場合、市場は過剰に反応する可能性がある。特に予想を大きく上回る数字が示された場合は、来月の利下げも見送られるとの観測が広がるだろう」と述べた。
22Vリサーチが実施した調査によると、CPI発表後の市場の反応について、投資家の18%は「リスクオン」になると予想。43%は「まちまち」、39%は「リスクオフ」になると回答した。
ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は「あすのCPIが好ましくない内容になるのは、間違いない」と指摘。「より重要なのは、それが問題かどうかだ。当社では問題だとは思わない。インフレは一時的な落ち込みを伴いつつも、根強く続くだろう。しかし、FRBの見通しを左右するのは雇用情勢の悪化だ」と話した。
来年に任期満了を迎えるFRB議長の後任候補として、ボウマン、ジェファーソン両副議長とダラス連銀のローガン総裁が検討されていると、匿名の政権当局者2人が明らかにした。選考プロセスを主導しているベッセント財務長官は、今後数週間以内に追加の候補者との面談を行う予定だという。
国債
米国債は小幅上昇(利回りは低下)。10年債は5営業日ぶりに値上がりした。市場では12日発表の7月米CPIが注目されている。
10年債利回りは先週付けた3カ月ぶり低水準の4.18%にじわり近づきつつある。同CPI統計は9月利下げが実施されるかどうかを判断する材料となり得る。弱い雇用統計を受けて、景気減速への懸念が高まっている。
トランプ関税が消費者や企業にとっての物価上昇につなっている兆しがあるか、政策当局者や投資家はデータを注視。データ次第でFRBの利下げ方針が変わる可能性もある。市場は現時点で来月の利下げ確率を約80%と織り込んでいる。
ハートフォード・ファンズの債券ストラテジスト、アマ―・レガンティ氏は「FRBがデータ次第の姿勢を示しているため、市場はインフレに強い関心を寄せている」と指摘。「FRBは二重責務に縛られている。足元では労働市場の軟化と根強いインフレが示されている」と語った。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のシニアポートフォリオマネジャー、マイケル・カジル氏は今回のCPIについて、「関税分の価格転嫁動向を見極める上で重要だ。市場はその点を引き続き探ろうとしている」と述べた。
コメルツ銀行のストラテジストは「あすの米インフレ統計は、最も注目されるマクロ経済指標となり、9月利下げへの道筋をつける役割を果たすだろう」とリポートで指摘。米国の関税はこれまでのところ、物価に限定的な影響しかもたらしていないと付け加えた。
外為
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は上昇。円は対ドルで下落し、一時0.4%安の1ドル=148円25銭を付けた。
ウルフ・リサーチのチーフエコノミスト、ステファニー・ロス氏は7月の米CPIについて、「やや高めの数字になる可能性がある」と指摘。「ただし、関税の本格的な影響が表れ始めるのは今後数カ月の統計になるだろう」と述べた。
パトリック・ロック氏らJPモルガン・チェースのストラテジストは、ドルのショートポジションはここ数週間に解消されてきたものの、ドルは「全体としてショートの状態が続いている」と10日のリポートで指摘。雇用統計発表後に弱気な見方が一部で再燃していると記した。
今週公表の米経済指標はCPIのほか、14日には生産者物価指数(PPI)、15日には小売売上高も予定されている。
原油
ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。世界の原油供給見通しを測る上で、15日に予定されているトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領の会談に関する詳細を待つムードが強かった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は夏場で商いが薄い中、2カ月ぶり安値近辺で推移した。
トランプ氏はこの日、プーチン氏とは「手探りの会談になる」との見方を示し、「ディール(合意)を決定するのは私ではない」と述べた。
SEBのコモディティー担当チーフアナリスト、ビヤルネ・シールドロップ氏は「このプロセスが続いている限り、トランプ氏がロシア産原油に制裁を科す可能性は極めて低い。すなわち、ロシアの原油を巡る混乱は予想されない」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前週末比8セント(0.1%)高の1バレル=63.96ドル。ロンドンICEの北海ブレント10月限は4セント上昇し66.63ドルで引けた。
金
金相場は反落。米当局者がブルームバーグに対して8日、金地金の輸入に関税を課さない方針を明確にするため近く大統領令を出すと明らかにしたことを受け、アジア時間帯から下げていた。
トランプ米大統領はこの日、「金には関税を課さない」とトゥルースソーシャルに投稿。スポット価格はその後に下げをやや縮小した。
現時点では、米政府機関による公式発表はまだない。
先週の金価格は一時、米税関・国境取締局(CBP)が重量1キログラムと100オンスの金地金は関税の対象になると公表したことで、大幅に上昇していた。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、41.26ドル(1.2%)安の1オンス=3356.49ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、86.60ドル(2.5%)安の3404.70ドルで引けた。
原題:Stock Rally Stalls in Countdown to Inflation Data: Markets Wrap(抜粋)
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