8日の日本市場は株式が大幅続伸し、東証株価指数(TOPIX)は史上初の3000ポイント台に乗せた。堅調な企業決算に加えて、自動車をはじめとする米国との関税を巡る懸念が後退したことや米利下げ期待などから輸出関連を中心に買いが広がった。

円は株高を受けたリスク選好の売りにより朝方の上げを解消し、1ドル=147円台前半で弱含む展開。日本銀行が公表した金融政策決定会合の「主な意見」で利上げに前向きなタカ派的な意見が示され、債券は下落(利回りは上昇)した。

訪米中の赤沢亮正経済再生担当相は現地時間7日、米閣僚と会談し、対日自動車関税を引き下げる大統領令を発令することを確認した。併せて日本製品に15%の関税を上乗せした大統領令も修正するという。

KCMトレードのチーフマーケットアナリストであるティム・ウォタラー氏は、投資家は他国に対する適用済みの関税率を見ながら、日本は15%の関税率で相対的に有利と考えるようになっていると指摘。日本と米国の貿易協定は他のアジア諸国と比べてもまずまずの水準に見えると述べた。

株式

東京株式相場は4日続伸。米国の利下げ期待や半導体株高に加えて、関税懸念が後退し、日経平均株価は一時取引時間中として7月24日以来、約2週間ぶりに4万2000円を上回った。

自動車や電機、精密機器などの輸出関連や情報・通信、商社株が高く、食品や電気・ガスなど内需関連も堅調。東証33業種中、医薬品や非鉄金属など4業種以外全て上昇した。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、トヨタ自動車や日産自動車が上昇し「米国との関税交渉を好感した値動きになっている」と指摘。赤沢再生相が大統領令が修正されると話し、市場は安心していると述べた。

個別では第1四半期が2期連続の黒字となったソフトバンクグループ株が一時15%近く上昇、今期営業利益計画を上方修正したソニーグループ株は一時6%高となり、それぞれ最高値を更新した。

岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、日本株の上昇は「想像以上に強い」とし、事業環境面の影響はありながらも主要企業の決算に大きな波乱はなかったと話した。

為替

東京外国為替市場で円相場は1ドル=147円台前半で弱含み。米連邦準備制度理事会(FRB)の人事に絡んで米金融当局が利下げに積極的なハト派化するとの思惑からドル売りが先行した後、株高を背景にリスク選好の円売りが優勢となった。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは「関税の話を好感して株が急上昇しているため、リスクオン的に円が売られドルの買い戻しが優勢になっている」と説明。日本の3連休を前に国内輸入企業などのドル買い需要も多いようだと話した。

7日の米国市場では、次期FRB議長候補として先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを支持したウォラー理事が最有力視されているとの報道や、トランプ氏によるミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長のFRB理事指名を受けてドルが売られた。東京市場もこの流れを引き継いで始まり、円は一時146円72銭まで上昇した。

諸我氏は「ミラン氏はドル安論者でもあり、発言への警戒からドルが売られた」とした。また、赤沢氏の発言で関税を巡る不透明感が後退し、石破茂首相が続投することで財政拡大が進まず、日銀の利上げ期待もある程度高まるとの見方からもう一段ドル安・円高が進んだと説明した。

債券

債券相場は下落。日銀の「主な意見」で早ければ年内にも現状の様子見モードが解除できる可能性があるなどの見解が示されたことが売り材料視された。午後に始まった自民党の両院議員総会に対する不透明感も相場の重しとなった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、主な意見は物価上振れを懸念する発言が目立ち、「植田和男総裁のハト派的な記者会見よりも政策委員全体はややタカ派的ということが示された」と指摘する。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、関税に関する赤沢再生相の話も債券相場の重しになったとした上で、相場は午前の引けにかけて下げ渋っており、「売り材料は一通り消化した状況」でさらなる下落は見込みにくいとの見方を示した。

新発国債利回り(午後3時時点)

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:横山桃花、長谷川敏郎.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.