(ブルームバーグ):財務省が7日に実施した新発30年国債の入札は、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が過去12カ月平均とほぼ同水準になった。利回りが3%台と過去最高付近にあり投資家が購入に前向きだった。
入札結果によると、応札倍率は3.43倍と過去12カ月平均の3.38倍を小幅に上回った。小さいほど好調な入札とされるテール(落札価格の最低と平均の差)は15銭と、前回の31銭から縮小した。最低落札価格は95円35銭と市場予想と同じだった。
明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、入札は「無難からしっかり、どちらかと言うとしっかり目な結果。利回り曲線上や金利水準的に見て需要があった」と話した。MCPアセット・マネジメントの嶋津洋樹チーフストラテジストは「事前に調整が入り、警戒されたほど悪くなかった」と述べた。
入札結果を受けて新発30年国債は買われ、利回りは一時3.055%まで低下した。長期国債先物の中心限月9月物は一時138円79銭とこの日の高値に並んだ。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは無難な結果となった要因として、3.0%台後半とまずまずの金利水準で入札できたことと、相対的に割高感がなかったことを挙げた。
ブルームバーグのストラテジストは次のように指摘する:
償還期間が長めの国債は、30年債入札が堅調だったことでひとまず安心感を得られそうだ。
米国の金利低下の流れは、日本国債を含む世界の債券市場全体の支援材料となる。ただ、依然としてリスクは高いままで、国内の政治的な不透明感やスタグフレーションの懸念が見通しを不透明にしている。現時点では入札結果が一定の下支えとなっているが、市場が完全に安心できる状況には至っていない。
防衛費の増額や財政支出拡大への懸念から日本を含めて世界的に超長期債利回りが上昇。金利の急騰を抑えるため、財務省は異例となる国債発行計画の見直しを行った。債券相場は安定し、前回7月に続いて波乱のない超長期ゾーンの入札となった。
日本銀行は早期利上げに慎重とみられ、債券には買いが入りやすい。市場の金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場で、日銀の年内利上げの織り込みは6割弱にとどまっている。
一方で、日銀は大規模な国債買い入れを段階的に縮小しており、30年債の利回りは過去最高に近い水準で推移している。7月の参院選で自民・公明の与党が大敗したことから、投資家の間で財政拡大への警戒感が高まっている。
みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、財政拡大を懸念する向きもあるが「実務者レベルでは水準が重視されている」とみており、「超長期ゾーンがこれ以上大きく崩れるイメージは現時点では持っていない」と言う。
(ストラテジストらのコメントを追加して更新します)
--取材協力:グラス美亜、清原真里、横山桃花.
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