トランプ米大統領は1日、米労働省労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー局長を解任した。7月の雇用統計発表から数時間後に明らかにしたもので、同雇用統計では雇用者の伸びがこの3カ月に大きく減速したことが示されていた。

トランプ氏は「このバイデン前大統領の政治任命者を即時解任するよう、チームに指示した」とソーシャルメディアに投稿。雇用統計を政治目的で利用したとして、証拠を示さずにマッケンターファー氏を非難した。

「より有能で資格のある人物が後任になる。このような重要な数字は公正かつ正確でなければならない。政治的目的で操作されてはならない」とトランプ氏は続けた。

今回の雇用統計では、経済を巡る不確実性が広がる中で、労働市場のペースが落ち始めていることが改めて示唆された。7月の非農業部門雇用者数は前月比7万3000人増。雇用者数の伸びは前月と前々月合わせて26万人近く下方修正された。これまで3カ月の平均はわずか3万5000人の増加で、コロナ禍後の最悪を記録した。

好景気を誇示し、関税引き上げや減税が米経済を押し上げると主張してきたトランプ氏にとって、今回の雇用統計は大きな痛手となった。

マッケンターファー氏の解任には、共和党系の経済学者からも批判の声が上がっており、市場関係者の間にも不安が広がっている。

トランプ氏が解任を命じた数時間後には、米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事が8月8日付で辞任すると、FRBが発表した。 雇用統計とBLS局長解任のニュースで市場が揺れる中、トランプ氏はFRBへの影響力を強める機会を得た。トランプ氏が決定する後任には、利下げを支持する人物が指名されるとの見方が強い。

PNCアセット・マネジメント・グループのチーフ投資ストラテジスト、ユンユ・マー氏はトランプ氏が「BLSを標的にしたことで、今後、経済政策の判断に政治が介入するのではないかとの不安が市場に広がるだろう」とした上で、「投資家にとって最大の懸念は次の一手だ。パウエルFRB議長の解任を再び示唆するかどうかだ」と指摘した。

トランプ氏は今回の雇用統計発表後、パウエル議長への批判も再開した。

マッケンターファー氏は2023年にバイデン前大統領によって局長に指名され、24年1月に承認された。

チャベスデレマー労働長官は、労働統計局のウィリアム・ウィアトロウスキー副局長が当面は局長代行を務めると明らかにした。

労働統計局長は大統領に任命されるが、同統計局は自らの業務を「独立」かつ「超党派的」と説明している。エコノミストやストラテジストは、この中立性こそが、データに対する国民や金融市場の信頼を支えていると指摘する。発表される数値に基づき、市場で数兆ドル規模の資金が動く可能性があるためだ。

調査会社マクロポリシー・パースペクティブの創業者、ジュリア・コロナド氏はマッケンターファー氏が解任されれば「この先、データの信頼性を十分に確信することができなくなるだろう」と指摘。「このデータは極めて価値の高い公共サービスであり、その信頼性が不可欠だ」と語った。

原題:Trump Fires Data Chief on Bad Job News, Gets Chance to Tilt Fed、Trump Moves to Fire Labor Statistics Head After Weak Jobs Data(抜粋)

(背景などを追加して更新します)

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