(ブルームバーグ):トランプ米大統領はイーライリリーやノボノルディスク、ファイザーといった世界的な製薬大手17社に対し、米メディケイド(低所得者向け公的医療保険)対象薬品の価格を他国の最低価格と同水準に引き下げるよう書簡で要求した。
トランプ氏は今後発売される新薬についても海外の水準と同等の価格設定を求めた。60日以内に自主的な対応に応じなければ、「薬価を巡る不当な慣行の継続から米国の家族を守るためにあらゆる手段を講じる」と警告した。
この要求を受けて、1日の欧州株式市場では製薬株が下落。ノボノルディスクは一時6%安と特に下げが大きく、欧州の時価総額上位10社から陥落した。アストラゼネカは一時4%を超える下げ。欧州のバイオテクノロジー・製薬大手で構成するブルームバーグの指数は1.7%下落した。
7月31日の米国市場で、S&P500医薬品株指数は2.7%下落。特にメルクやブリストルマイヤーズスクイブが下げを主導した。リリー株は2.6%下げ、トランプ氏の書簡を受け取ったアッヴィも上げ幅を縮小した。
トランプ氏はリリーのデーブ・リックス最高経営責任者(CEO)に宛てた書簡で、「医薬品メーカーからは、著しく水増しされた価格から米国の消費者を直ちに救済し、米国のイノベーションへの欧州や他の先進国の『ただ乗り』を終わらせるという約束以外、私は今後受け付けない」と訴えた。書簡はソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで公開された。
製薬業界は長年、薬価を他国の水準に合わせる案に抵抗してきた。米国が長らく維持してきたバイオ医薬研究での優位が脅かされ、新たな治療法の開発意欲をそぎ、結果的に必要な薬を患者が入手できなくなると主張。業界幹部らは、価格交渉を担う医薬品流通の中間業者にこそ注意を向けるべきだと政府に訴えてきた。
今回の書簡に対し、各社は政権に協力する姿勢を表明する声明を発表したが、業界最大のロビー団体は強い反対姿勢を示した。
米国研究製薬工業協会(PhRMA)の広報担当、アレックス・シュライバー氏は「他国が導入する薬価統制を輸入すれば、米国の主導権を損ない、患者や勤労者を苦しめる」と批判した。
BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、エバン・シーガーマン氏は「今回の発表は大きな話題を呼ぶものだが、トランプ政権がこれらの政策を実行できる可能性は低いとみている。法的な正当性を欠く可能性がある」との認識を示した。
他の企業にも同様の書簡が送られた。送り先はリリーのほか、サノフィとリジェネロン・ファーマシューティカルズ、メルク、GSK、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ジェネンテック、アムジェン、アストラゼネカ、ノボノルディスク、ファイザー、EMDセローノ、ギリアド・サイエンシズ、ノバルティス、べーリンガー・インゲルハイム、ブリストルマイヤーズスクイブ、アッヴィ。
原題:Trump Demands Drug Companies Slash US Prices in Blow to Industry、Trump Demands Drugmakers Slash US Prices in Blow to Industry (1)(抜粋)
(第3段落に欧州製薬株の動きを挿入します)
--取材協力:Damian Garde.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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